日蓮大聖人御書
ネット御書
(撰時抄)
<1.前 P0290 2.次>

日本国にわたらせ給える法華経は須弥山のごとし。
 又云く「能く是の経典を受持すること有らん者も、亦復是くの如し、一切衆生の中に於て亦これ第一なり」等云云、此の経文をもつて案ずるに華厳経を持てる普賢菩薩解脱月菩薩等竜樹菩薩馬鳴菩薩法蔵大師清涼国師則天皇后審祥大徳良弁僧正聖武天皇深密般若経を持てる勝義生菩薩須菩提尊者嘉祥大師玄奘三蔵太宗高宗観勒道昭孝徳天皇、真言宗の大日経を持てる金剛薩ト竜猛菩薩竜智菩薩印生王善無畏三蔵金剛智三蔵不空三蔵玄宗代宗慧果弘法大師慈覚大師、涅槃経を持てる迦葉童子菩薩五十二類曇無懺三蔵、光宅寺の法雲南三北七の十師等よりも末代悪世の凡夫の一戒も持たず一闡提のごとくに人には思はれたれども、経文のごとく已今当にすぐれて法華経より外は仏になる道なしと強盛に信じて而も一分の解なからん人人は、彼等の大聖には百千万億倍のまさりなりと申す経文なり、彼の人人は或は彼の経経に且く人を入れて法華経へうつさんがためなる人もあり、或は彼の経に著をなして法華経へ入らぬ人もあり、或は彼の経経に留逗のみならず彼の経経を深く執するゆへに法華経を彼の経に劣るという人もあり、されば今法華経の行者は心うべし、譬えば「一切の川流江河の諸水の中に海これ第一なるが如く法華経を持つ者も亦復是くの如し、又衆星の中に月天子最もこれ第一なるが如く法華経を持つ者も亦復是くの如し」等と御心えあるべし、当世日本国の智人等は衆星のごとし日蓮は満月のごとし。
 問うて云く古へかくのごとくいえる人ありや、答えて云く伝教大師の云く「当に知るべし他宗所依の経は未だ最為第一ならず其の能く経を持つ者も亦未だ第一ならず天台法華宗は所持の経最為第一なるが故に能く法華を持つ者も亦衆生の中に第一なり、已に仏説に拠る豈自歎ならんや」等云云、夫れ麒麟の尾につけるだにの一日に千里を飛ぶといゐ、転王に随える劣夫の須臾に四天下をめぐるというをば難ずべしや疑うべしや、豈自歎哉の釈は肝にめいずるか


<1.前 P0290 2.次>