日蓮大聖人御書
ネット御書
(報恩抄)
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華厳経涅槃経法華経の三経に詮じいだし此の三経の中に殊に華厳経を講じ給いき、別して礼文を造りて日日に功をなし給いしかば世間の人おもわく此人も華厳経を第一とおぼすかと見えしほどに法雲法師が一切経の中に華厳第一涅槃第二法華第三と立てたるがあまりに不審なりける故にことに華厳経を御らんありけるなり、かくて一切経の中に法華第一涅槃第二華厳第三と見定めさせ給いてなげき給うやうは如来の聖教は漢土にわたれども人を利益することなしかへりて一切衆生を悪道に導びくこと人師のワによれり、例せば国の長とある人東を西といゐ天を地といゐいだしぬれば万民はかくのごとくに心うべし、後にいやしき者出来して汝等が西は東汝等が天は地なりといはばもちうることなき上我が長の心に叶わんがために今の人をのりうちなんどすべしいかんがせんとはおぼせしかどもさてもだすべきにあらねば光宅寺の法雲法師は謗法によつて地獄に堕ちぬとののしられ給う、其の時南北の諸師はちのごとく蜂起しからすのごとく烏合せり、智笆@師をば頭をわるべきか国ををうべきかなんど申せし程に陳主此れをきこしめして南北の数人に召し合せて我と列座してきかせ給いき、法雲法師が弟子等の慧栄法歳慧曠慧なんど申せし僧正僧都已上の人人百余人なり各各悪口を先とし眉をあげ眼をいからし手をあげ柏子をたたく、而れども智笆@師は末座に坐して色を変ぜず言をワらず威儀しづかにして諸僧の言を一一に牒をとり言ごとにせめかえす、をしかへして難じて云く抑も法雲法師の御義に第一華厳第二涅槃第三法華と立させ給いける証文は何れの経ぞ慥かに明かなる証文を出ださせ給えとせめしかば各各頭をうつぶせ色を失いて一言の返事なし。
 重ねてせめて云く無量義経に正しく次説方等十二部経摩訶般若華厳海空等云云、仏我と華厳経の名をよびあげて無量義経に対して未顕真実と打ち消し給う法華経に劣りて候無量義経に華厳経はせめられて候ぬいかに心えさせ給いて華厳経をば一代第一とは候けるぞ各各御師の御かたうどせんとをぼさば此の経文をやぶりて


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