日蓮大聖人御書
ネット御書
(報恩抄)
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盗人はとめざればいからず火は薪を加えざればさかんならず、謗法はあれどもあらわす人なければ王法もしばらくはたえず国もをだやかなるににたり、例せば日本国に仏法わたりはじめて候いしに始はなに事もなかりしかども守屋仏をやき僧をいましめ堂塔をやきしかば天より火の雨ふり国にはうさうをこり兵乱つづきしがごとし、此れはそれにはにるべくもなし、謗法の人人も国に充満せり、日蓮が大義も強くせめかかる修羅と帝釈と仏と魔王との合戦にもをとるべからず、金光明経に云く「時に鄰国の怨敵是くの如き念を興さん当に四兵を具して彼の国土を壊るべし」等云云、又云く「時に王見已つて即四兵を厳いて彼の国に発向し討罰を為んと欲す我等爾の時に当に眷属無量無辺の薬叉諸神と各形を隠して為に護助を作し彼の怨敵をして自然に降伏せしむべし」等云云、最勝王経の文又かくのごとし、大集経云云仁王経云云、此等の経文のごときんば正法を行ずるものを国主あだみ邪法を行ずる者のかたうどせば大梵天王帝釈日月四天等隣国の賢王の身に入りかわりて其の国をせむべしとみゆ、例せば訖利多王を雪山下王のせめ大族王を幻日王の失いしがごとし、訖利多王と大族王とは月氏の仏法を失いし王ぞかし、漢土にも仏法をほろぼしし王みな賢王にせめられぬ、これは彼にはにるべくもなし仏法のかたうどなるようにて仏法を失なう法師を扶くと見えて正法の行者を失うゆへに愚者はすべてしらず智者なんども常の智人はしりがたし、天も下劣の天人は知らずもやあるらん、されば漢土月氏のいにしへのみだれよりも大きなるべし。
 法滅尽経に云く「吾般泥。の後五逆濁世に魔道興盛し魔沙門と作つて吾が道を壊乱せん、乃至悪人転多く海中の沙の如く善者甚だ少して若しは一若しは二」云云、涅槃経に云く「是くの如き等の涅槃経典を信ずるものは爪上の土の如く乃至是の経を信ぜざるものは十方界の所有の地土の如し」等云云、此の経文は時に当りて貴とく予が肝に染みぬ、当世日本国には我も法華経を信じたり信じたり、諸人の語のごときんば一人も謗法の者なし、


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