日蓮大聖人御書
ネット御書
(乙御前御消息)
<1.前 P1219 2.次>

衆となりぬ、竜女と申せし蛇体の女人は法華経を文珠師利菩薩説き給ひしかば仏になりぬ、其の上仏説には悪世末法と時をささせ給いて末代の男女にをくらせ給いぬ、此れこそ唐船の如くにて候一乗経にてはおはしませ、されば一切経は外典に対すれば石と金との如し、又一切の大乗経所謂華厳経大日経観経阿弥陀経般若経等の諸の経経を法華経に対すれば螢火と日月と華山と蟻塚との如し、経に勝劣あるのみならず大日経の一切の真言師と法華経の行者とを合すれば水に火をあはせ露と風とを合するが如し、犬は師子をほうれば腸くさる修羅は日輪を射奉れば頭七分に破る、一切の真言師は犬と修羅との如く法華経の行者は日輪と師子との如し、冰は日輪の出でざる時は堅き事金の如し、火は水のなき時はあつき事鉄をやけるが如し、然れども夏の日にあひぬれば堅冰のとけやすさあつき火の水にあひてきへやすさ、一切の真言師は気色のたうとげさ智慧のかしこげさ日輪をみざる者の堅き冰をたのみ水をみざる者の火をたのめるが如し。
 当世の人人の蒙古国をみざりし時のおごりは御覧ありしやうにかぎりもなかりしぞかし、去年の十月よりは一人もおごる者なし、きこしめししやうに日蓮一人計りこそ申せしがよせてだにきたる程ならば面をあはする人もあるべからず、但さるの犬ををそれかゑるの蛇ををそるるが如くなるべし、是れ偏に釈伽仏の御使いたる法華経の行者を一切の真言師念仏者律僧等ににくませて我と損じ、ことさらに天のにくまれをかほれる国なる故に皆人臆病になれるなり、譬えば火が水をおそれ木が金をおぢ雉が鷹をみて魂を失ひねずみがcにせめらるるが如し、一人もたすかる者あるべからず、其の時はいかがせさせ給うべき、軍には大将軍を魂とす大将軍をくしぬれば歩兵臆病なり。
 女人は夫を魂とす夫なければ女人魂なし、此の世に夫ある女人すら世の中渡りがたふみえて候に、魂もなくして世を渡らせ給うが魂ある女人にもすぐれて心中かひがひしくおはする上神にも心を入れ仏をもあがめさせ給へば人に勝れておはする女人なり、


<1.前 P1219 2.次>