日蓮大聖人御書
ネット御書
(三大秘法禀承事)
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叡山に座主始まつて第三第四の慈覚智証存の外に本師伝教義真に背きて理同事勝の狂言を本として我が山の戒法をあなづり戯論とわらいし故に、存の外に延暦寺の戒清浄無染の中道の妙戒なりしが徒に土泥となりぬる事云うても余りあり歎きても何かはせん、彼の摩黎山の瓦礫の土となり栴檀林の荊棘となるにも過ぎたるなるべし、夫れ一代聖教の邪正偏円を弁えたらん学者の人をして今の延暦寺の戒壇をミましむべきや、此の法門は義理を案じて義をつまびらかにせよ、此の三大秘法は二千余年の当初地涌千界の上首として日蓮慥かに教主大覚世尊より口決相承せしなり、今日蓮が所行は霊鷲山の稟承に芥爾計りの相違なき色も替らぬ寿量品の事の三大事なり。
 問う一念三千の正しき証文如何、答う次に出し申す可し此に於て二種有り、方便品に云く「諸法実相所謂諸法如是相乃至欲令衆生開仏知見」等云云、底下の凡夫理性所具の一念三千か、寿量品に云く「然我実成仏已来無量無辺」等云云、大覚世尊久遠実成の当初証得の一念三千なり、今日蓮が時に感じて此の法門広宣流布するなり予年来己心に秘すと雖も此の法門を書き付て留め置ずんば門家の遺弟等定めて無慈悲の讒言を加う可し、其の後は何と悔ゆとも叶うまじきと存ずる間貴辺に対し書き送り候、一見の後秘して他見有る可からず口外も詮無し、法華経を諸仏出世の一大事と説かせ給いて候は此の三大秘法を含めたる経にて渡らせ給えばなり、秘す可し秘す可し。
= 弘安四年卯月八日                日蓮花押
% 大田金吾殿御返事


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