日蓮大聖人御書
ネット御書
(千日尼御前御返事)
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 ここに日蓮願つて云く日蓮は全くワなし設い僻事なりとも日本国の一切の女人を扶けんと願せる志はすてがたかるべし、何に況や法華経のままに申す、而るを一切の女人等信ぜずばさでこそ有るべきにかへりて日蓮をうたする、日蓮が僻事か釈迦多宝十方の諸仏菩薩二乗梵釈四天等いかに計らい給うぞ、日蓮僻事ならば其の義を示し給へ、ことには日月天は眼前の境界なり、又仏前にしてきかせ給える上法華経の行者をあだまんものをば「頭破れて七分と作らん」等と誓わせ給いて候へばいかんが候べきと日蓮強盛にせめまいらせ候ゆへに天此の国を罰すゆへに此の疫病出現せり、他国より此の国を天をほせつけて責めらるべきに両方の人あまた死ぬべきに天の御計らいとしてまづ民を滅ぼして人の手足を切るがごとくして大事の合戦なくして此の国の王臣等をせめかたぶけて法華経の御敵を滅ぼして正法を弘通せんとなり。
 而るに日蓮佐渡の国へ流されたりしかば彼の国の守護等は国主の御計らいに随いて日蓮をあだむ万民は其の命に随う、念仏者禅律真言師等は鎌倉よりもいかにもして此れへわたらぬやう計ると申しつかわし極楽寺の良観房等は武蔵の前司殿の私の御教書を申して弟子に持たせて日蓮をあだみなんとせしかばいかにも命たすかるべきやうはなかりしに天の御計らいはさてをきぬ、地頭地頭念仏者念仏者等日蓮が庵室に昼夜に立ちそいてかよう人もあるをまどわさんとせめしに阿仏房にひつをしおわせ夜中に度度御わたりありし事いつの世にかわすらむ、只悲母の佐渡の国に生れかわりて有るか。
 漢土に沛公と申せし人王の相有りとて秦の始皇の勅宣を下して云く沛公打ちてまいらせん者には不次の賞を行うべし、沛公は里の中には隠れがたくして山に入りて七日二七日なんど有るなり、其の時命すでにをわりぬべかりしに沛公の妻女呂公と申せし人こそ山中を尋ねて時時命をたすけしが彼は妻なればなさけすてがたし、


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