日蓮大聖人御書
ネット御書
(上野殿御消息)
<1.前 P1528 2.次>

然る間四恩を報ずべきかと思ふに女人をきらはれたる間母の恩報じがたし、次に仏阿含小乗経を説き給いし事十二年是こそ小乗なれば我等が機にしたがふべきかと思へば男は五戒女は十戒法師は二百五十戒尼は五百戒を持ちて三千の威儀を具すべしと説きたれば末代の我等かなふべしともおぼえねば母の恩報じがたし、況や此の経にもきらはれたり、方等般若四十余年の経経に皆女人をきらはれたり、但天女成仏経観経等にすこし女人の得道の経文有りといへども但名のみ有つて実なきなり、其の上未顕真実の経なれば如何が有りけん、四十余年の経経に皆女人を嫌われたり、又最後に説き給いたる涅槃経にも女人を嫌はれたり、何れか四恩を報ずる経有りと尋ぬれば法華経こそ女人成仏する経なれば、八歳の竜女成仏し仏の姨母、曇弥耶輸陀羅比丘尼記にあづかりぬ、されば我等が母は但女人の体にてこそ候へ畜生にもあらず蛇身にもあらず八歳の竜女だにも仏になる、如何ぞ此の経の力にて我が母の仏にならざるべき、されば法華経を持つ人は父と母との恩を報ずるなり、我が心には報ずると思はねども此の経の力にて報ずるなり。
 然る間釈迦多宝等の十方無量の仏上行地涌等の菩薩も普賢文殊等の迹化の大士も舎利弗等の諸大声聞も大梵天王日月等の明主諸天も八部王も十羅刹女等も日本国中の大小の諸神も総じて此の法華経を強く信じまいらせて余念なく一筋に信仰する者をば影の身にそふが如く守らせ給ひ候なり、相構て相構て心を翻へさず一筋に信じ給ふならば現世安穏後生善処なるべし、恐恐謹言。
                        日蓮花押
%  上野殿


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