日蓮大聖人御書
ネット御書
(上野殿御返事)
<1.前 P1546 2.次>

日本国すでに釈迦多宝十方の仏の大怨敵となりて数年になり候へばやうやくやぶれゆくほどに又かう申す者を御あだみあり、わざはひにわざはひのならべるゆへに此の国土すでに天のせめをかほり候はんずるぞ。
 此の人は先世の宿業かいかなる事ぞ、臨終に南無妙法蓮華経と唱えさせ給いける事は一眼のかめの浮木の穴に入り天より下いとの大地のはりの穴に入るがごとし、あらふしぎ(不思議)ふしぎ、又念仏は無間地獄に堕つると申す事をば経文に文明なるをばしらずして皆人日蓮が口より出でたりとおもへり、天はまつげのごとしと申すはこれなり、虚空の遠きとまつげの近きと人みなみる事なきなり、此の尼御前は日蓮が法門だにひが事に候はばよも臨終には正念には住し候はじ。
 又日蓮が弟子等の中になかなか法門しりたりげに候人人はあしく候げに候、南無妙法蓮華経と申すは法華経の中の肝心人の中の神のごとし、此れにものをならぶればきさきのならべて二王をおとことし、乃至きさきの大臣已下になひなひとつぐがごとし、わざはひのみなもとなり、正法像法には此の法門をひろめず余経を失わじがためなり、今末法に入りぬりば余経も法華経もせんなし、但南無妙法蓮華経なるべし、かう申し出だして候もわたくしの計にはあらず、釈迦多宝十方の諸仏地涌千界の御計なり、此の南無妙法蓮華経に余事をまじへばゆゆしきひが事なり、日出でぬればとほしびせんなし雨のふるに露なにのせんかあるべき、嬰児に乳より外のものをやしなうべきか、良薬に又薬を加えぬる事なし。
 此の女人はなにとなけれども自然に義にあたりてしををせるなり、たうとしたうとし、恐恐謹言。
=弘安元年四月一日                      日蓮花押
%   上野殿御返事


<1.前 P1546 2.次>