日蓮大聖人御書
ネット御書
(四信五品抄)
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天台伝教の善知識に違背して心無畏不空等の悪友に遷れり、末代の学者慧心の往生要集の序に誑惑せられて法華の本心を失い弥陀の権門に入る退大取小の者なり、過去を以て之を推するに未来無量劫を経て三悪道に処せん若し悪友に値えば即ち本心を失うとは是なり。
 問うて日く其の証如何答えて日く止観第六に云く「前教に其の位を高うする所以は方便の説なればなり円教の位下きは真実の説なればなり」弘決に云く「前教と云うより下は正く権実を判ず教弥よ実なれば位弥よ下く教弥よ権なれば位弥よ高き故に」と、又記の九に云く「位を判ずることをいわば観境弥よ深く実位弥よ下きを顕す」と云云、他宗は且らく之を置く天台一門の学者等何ぞ実位弥下の釈を閣いて慧心僧都の筆を用ゆるや、畏智空と覚証との事は追つて之を習え大事なり大事なり一閻浮提第一の大事なり心有らん人は聞いて後に我を外め。
 問うて云く末代初心の行者何物をか制止するや、答えて日く檀戒等の五度を制止して一向に南無妙法蓮華経と称せしむるを一念信解初随喜の気分と為すなり是れ則ち此の経の本意なり、疑って云く此の義未だ見聞せず心を驚かし耳を迷わす明かに証文を引て請う苦に之を示せ、答えて云く経に云く「須く我が為に復た塔寺を起て及び僧坊を作り四事を以て衆僧を供養することをもちいざれ」此の経文明かに初心の行者に檀戒等の五度を制止する文なり、疑って云く汝が引く所の経文は但寺塔と衆僧と計りを制止して未だ諸の戒等に及ばざるか、答えて日く初を挙げて後を略す、問て日く何を以て之を知らん、答えて日く次下の第四品の経文に云く「況や復人有つて能く是の経を持ちて兼ねて布施持戒等を行ぜんをや」云云、経文分明に初二三品の人には檀戒等の五度を制止し第四品に至って始めて之を許す後に許すを以て知んぬ初に制する事を、問うて日く経文一往相似たり将た又疏釈有りや、答えて日く汝が尋ぬる所の釈とは月氏四依の論か将た又漢土日本の人師の書か本を捨て末を尋ね体を離れて影を求め源を忘れて流を貴ぶ分明なる経文を閣いて論釈を請い尋ぬ本経に相違する末釈有らば本経を捨てて


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