日蓮大聖人御書
ネット御書
(薬王品得意抄)
<1.前 P1500 2.次>

況や二三四乃至五十展転をや河は深けれども大海の浅きに及ばず諸経は一字一句十念等を以て十悪五逆等の悪機を摂すと雖も未だ一字一句の随喜五十展転には及ばざるなり、此の経の大海に死屍を留めずとは法華経に背く謗法の者は極善の人為りと雖も猶之を捨つ何に況や悪人なる上謗法を為さん者をや、設い諸経を謗ずと雖も法華経に背かざれば必ず仏道を成ず、設い一切経を信ずと雖も法華経に背かば必ず阿鼻大城に堕つ、乃至第八には大海は大身の衆生あり等と云うは大海には摩竭大魚等大身の衆生之有り、無間地獄と申すは縦広八万由旬なり五逆の者無間地獄に堕ちては一人にて必ず充満す、此の地獄の衆生は五逆の者大身の衆生なり、諸経の小河大河の中には摩竭大魚之無し法華経の大海には之有り、五逆の者仏道を成す是れ実には諸経に之無し諸経に之有りと云うと雖も実には未顕真実なり、故に一代聖教を諳し天台智者大師の釈に云く他経は但菩薩に記して二乗に記せず乃至但善に記して悪に記せず、今経は皆記す等云云、余は且く之を略す。
 第二には山に譬う、十宝山等とは、山の中には須弥山第一なり、十宝山とは一には雪山二には香山三には軻梨羅山四には仙聖山五には由乾陀山六には馬耳山七には尼民陀羅山八には斫伽羅山九には宿慧山十には須弥山なり、先の九山とは諸経諸山の如し、但し一一に財あり須弥山は衆財を具して其の財に勝れたり、例せば世間の金の閻浮檀金に及ばざるが如し、華厳経の法界唯心般若の十八空大日経の五相成身観経の往生より法華経の即身成仏勝れたるなり、須弥山は金色なり、一切の牛馬人天衆鳥等此の山に依れば必ず本色を失つて金色なり余山は爾らず一切の諸経は法華経に依れば本の色を失う例せば黒色の物の日月の光に値えば色を失うが如し諸経の往生成仏等の色は法華経に値えば必ず其の義を失う。
 第三には月に譬う衆星は或は半里或は一里或は八里或は十六里には過ぎず、月は八百余里なり衆星は光有りと雖も月に及ばず、設い百千万億乃至一四天下三千大千十方世界の衆星之を集むとも一の月の光に及ばず、



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