日蓮大聖人御書
ネット御書
(四条金吾釈迦仏供養事)
<1.前 P1146 2.次>

最勝王経に云く「此の経王の力に由つて流暉四天下を遶る」等云云、当に知るべし日月天の四天下をめぐり給うは仏法の力なり彼の金光明経最勝王経は法華経の方便なり勝劣を論ずれば乳と醍醐と金と宝珠との如し、劣なる経を食しましまして尚四天下をめぐり給う、何に況や法華経の醍醐の甘味を甞させ給はんをや、故に法華経の序品には普香天子とつらなりまします、法師品には阿耨多羅三藐三菩提と記せられさせ給う火持如来是なり、其の上慈父よりあひつたはりて二代我が身となりてとしひさし争かすてさせたまひ候べき、其の上日蓮も又此の天を恃みてたてまつり日本国にたてあひて数年なり、既に日蓮かちぬべき心地す利生のあらたなる事外にもとむべきにあらず、是より外に御日記たうとさ申す計りなけれども紙上に尽し難し。
 なによりも日蓮が心にたつとき事候、父母御孝養の事度度の御文に候上に今日の御文なんだ更にとどまらず、我が父母地獄にやおはすらんとなげかせ給う事のあわれさよ、仏の弟子の御中に目ヲ尊者と申しけるは父をばきつせん師子と申し母をば青提女と申しけるが餓鬼道におちさせ給いけるを凡夫にてをはしける時は、しらせ給わざりければなげきもなかりける程に、仏の御弟子とならせ給いて後阿羅漢となりて天眼をもつて御らんありければ餓鬼道におはしけり、是を御らんありて飲食をまいらせしかば炎となりていよいよ苦をましさせまいらせ給いしかば、いそぎはしりかへり仏に此の由を申させ給いしぞかし、爾の時の御心をおもひやらせ給へ、今貴辺は凡夫なり肉眼なれば御らんなけれどももしもさもあらばとなげかせ給うこは孝養の一分なり梵天帝釈日月四天も定めてあはれとおぼさんか、華厳経に云く「恩を知らざる者は多く横死に遭う」等云云、観仏相海経に云く「是れ阿鼻の因なり」等云云、今既に孝養の志あつし定めて天も納受あらんか[是二]。
 御消息の中に申しあはさせ給う事くはしく事の心を案ずるにあるべからぬ事なり、日蓮をば日本国の人あだむ是はひとへにさがみどの(相模殿)のあだませ給うにて候ゆへなき御政りごとなれども


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