日蓮大聖人御書
ネット御書
(災難対治抄)
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 ざるより之起れり十悪五逆は愚者皆罪為ることを知る故に輙く破国・破仏法の因縁を成ぜず、故に仁王経に云く「其の王別えずして此の語を信聴す」と、涅槃経に云く「若し四重を犯し五逆罪を作り自ら定めて是くの如き重事を犯すと知り而も心に初より怖畏・懺悔無くして肯て発露せず」[已上]。
 此くの如き等の文は謗法の者は自他共に子細を知らざる故に重罪を成して国を破し仏法を破するなり。
 問うて曰く若爾らば此の国土に於て権教を以て人の意を取り実教を失う者之有るか如何、答えて曰く爾なり、問うて曰く其の証拠如何、答えて曰く法然上人所造等の選択集是れなり今其の文を出して上の経文に合せ其の失を露顕せしめん若し対治を加えば国土を安穏ならしむ可きか、選択集に云く「道綽禅師・聖道浄土の二門を立て聖道を捨てて正しく浄土に帰するの文・初に聖道門とは之に就て二有り一には大乗二には小乗なり大乗の中に就いて顕密・権実等の不同有りと雖も今此の集の意は唯顕大及以び権大を存す故に歴劫迂回の行に当る之に準じて之を思うに密大及以び実大を存すべし、然れば則ち今真言・仏心・天台・華厳・三論・法相・地論・摂論此等の八家の意正しく此れに在るなり、曇鸞法師の往生論の注に云く「謹んで竜樹菩薩の十住毘婆沙を案ずるに云く菩薩・阿毘跋致を求むるに二種の道有り一には難行道二には易行道なり、此の中に難行道とは即ち是れ聖道門なり易行道とは即ち是れ浄土門なり、浄土宗の学者先ず須く此の旨を知るべし設い先ず聖道門を学する人と雖も若し浄土門に於て其の志有らん者は須く聖道を棄てて浄土に帰すべし」文、又云く「善導和尚正雑二行を立て雑行を捨てて正行に帰するの文、第一に読誦雑行とは上の観経等の往生浄土の経を除いて已外・大小乗・顕密の諸経に於て受持読誦するを悉く読誦雑行と名く、第三に礼拝雑行とは上の弥陀を礼拝するを除いて已外一切諸余の仏菩薩等及び諸の世天等に於て礼拝恭敬するを悉く礼拝雑行と名く」 私に云く此の文を見るに須く雑を捨てて専を修すべし豈百即百生の専修正行を捨てて堅く千中無一の雑修雑


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