日蓮大聖人御書
ネット御書
(法華経題目抄)
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諸の菩薩の二目ある二乗の眇目なる凡夫の盲目なる闡提の生盲なる共に爾前の経経にてはいろかたちをばわきまへずありし程に、法華経の時迹門の月輪始めて出で給いし時菩薩の両眼先にさとり二乗の眇目次にさとり凡夫の盲目次に開き生盲の一闡提未来に眼の開くべき縁を結ぶ是れ偏に妙の一字の徳なり。
 迹門十四品の一妙本門十四品の一妙合せて二妙、迹門の十妙本門の十妙合せて二十妙、迹門の三十妙本門の三十妙合せて六十妙、迹門の四十妙本門の四十妙観心の四十妙合せて百二十重の妙なり、六万九千三百八十四字一一の字の下に一の妙あり総じて六万九千三百八十四の妙あり、妙とは天竺には薩と云い漢土には妙と云う妙とは具の義なり具とは円満の義なり、法華経の一一の文字一字一字に余の六万九千三百八十四字を納めたり、譬えば大海の一ィの水に一切の河の水を納め一の如意宝珠の芥子計りなるが一切の如意宝珠の財を雨らすが如し、譬えば秋冬枯れたる草木の春夏の日に値うて枝葉華菓出来するが如し、爾前の秋冬の草木の如くなる九界の衆生法華経の妙の一字の春夏の日輪にあひたてまつりて菩提心の華さき成仏往生の菓なる、竜樹菩薩の大論に云く「譬えば大薬師の能く毒を以て薬と為すが如し」云云、此の文は大論に法華経の妙の徳を釈する文なり、妙楽大師の釈に云く「治し難きを能く治す所以に妙と称す」等云云、総じて成仏往生のなりがたき者四人あり第一には決定性の二乗第二には一闡提人第三には空心の者第四には謗法の者なり、此等を法華経にをいて仏になさせ給ふ故に法華経を妙とは云うなり。
 提婆達多は斛飯王の第一の太子浄飯王にはをひ阿難尊者がこのかみ教主釈尊にはいとこに当る南閻浮提にかろからざる人なり、須陀比丘を師として出家し阿難尊者に十八変をならひ外道の六万蔵仏の八万蔵を胸にうかべ五法を行じて殆ど仏よりも尊きけしきなり、両頭を立てて破僧罪を犯さんために象頭山に戒壇を築き仏弟子を招き取り、阿闍世太子をかたらいて云く我は仏を殺して新仏となるべし太子は父の王を殺して新王となり給へ、


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