日蓮大聖人御書
ネット御書
(単衣抄)
<1.前 P1515 2.次>

未だ見参にも入らぬ人の膚を隠す衣を送り給候こそ何とも存じがたく候へ、此の帷をきて仏前に詣でて法華経を読み奉り候いなば御経の文字は六万九千三百八十四字一一の文字は皆金色の仏なり、衣は一つなれども六万九千三百八十四仏に一一にきせまいらせ給へるなり、されば此の衣を給て候わば夫妻二人ともに此の仏御尋ね坐して我が檀那なりと守らせ給うらん、今生には祈りとなり財となり御臨終の時は月となり日となり道となり橋となり父となり母となり牛馬となり輿となり車となり蓮華となり山となり二人を霊山浄土へ迎え取りまいらせ給うべし、南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。
=   建治元年乙亥八月 日             日蓮花押
%此の文は藤四郎殿女房と常により合いて御覧あるべく候。
*上野殿母尼御前御返事

 母尼ごぜんにはことに法華経の御信心のふかくましまし候なる事悦び候と申させ給候へ。
 止観第五の事正月一日辰の時此れをよみはじめ候、明年は世間怱怱なるべきよし皆人申すあひだ一向後生のために十五日まで止観を談ぜんとし候が、文あまた候はず候御計らい候べきか、白米一斗御志申しつくしがたう候、鎌倉は世間かつして候、僧はあまたをはします過去の餓鬼道の苦をばつくのわせ候ひぬるか。
 法門の事、日本国に人ごとに信ぜさせんと願して候いしが願や成熟せんとし候らん、当時は蒙古の勘文によりて世間やわらぎて候なり子細ありぬと見へ候、本より信じたる人人はことに悦ぶげに候か、恐恐。
=  十二月二十二日               日蓮花押
%   上野殿母尼御前御返事


<1.前 P1515 2.次>