日蓮大聖人御書
ネット御書
(四条金吾許御文)
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汝は王子か女子か王子ならばたしかに聞き給へ、我は君の父仲哀天皇の敵を打たんが為に新羅国へ渡るなり、我が身は女の身なれば汝を大将とたのむべし、君日本国の主となり給うべきならば今度生れ給はずして軍の間腹の内にて数万騎の大将となりて父の敵を打たせ給へ、是を用ひ給はずして只今生れ給うほどならば海へ入れ奉らんずるなり、我を恨みに思い給うなと有りければ、王子本の如く胎内にをさまり給いけり、其の時石のをびを以て胎をひやし新羅国へ渡り給いて新羅国を打ちしたがへて還つて豊前の国うさの宮につき給いここにて王子誕生あり、懐胎の後三年六月三日と申す甲寅の年四月八日に生れさせ給う是を応神天皇と号し奉る、御年八十と申す壬申の年二月十五日にかくれさせ給ふ、男山の主我が朝の守護神正体めづらしからずして霊験新たにおはします今の八幡大菩薩是なり。
 又釈迦如来は住劫第九の減人寿百歳の時浄飯王を父とし摩耶夫人を母として中天竺伽毘羅衛国らんびに(蘭毘尼)薗と申す処にて甲寅の年四月八日に生れさせ給いぬ、八十年を経て東天竺倶尸那城跛提河の辺にて二月十五日壬申にかくれさせ給いぬ、今の八幡大菩薩も又是くの如し、月氏と日本と父母はかわれども四月八日と甲寅と二月十五日と壬申とはかわる事なし、仏滅度の後二千二百二十余年が間月氏漢土日本一閻浮提の内に聖人賢人と生るる人をば皆釈迦如来の化身とこそ申せどもかかる不思議は未だ見聞せず。
 かかる不思議の候上八幡大菩薩の御誓いは月氏にては法華経を説いて正直捨方便となのらせ給い、日本国にしては正直の頂にやどらんと誓い給ふ、而るに去ぬる十一月十四日の子の時に御宝殿をやいて天にのぼらせ給いぬる故をかんがへ候に此の神は正直の人の頂にやどらんと誓へるに正直の人の頂の候はねば居処なき故に栖なくして天にのぼり給いけるなり、日本国の第一の不思議には釈迦如来の国に生れて此の仏をすてて一切衆生皆一同に阿弥陀仏につけり、有縁の釈迦をばすて奉り無縁の阿弥陀仏をあをぎたてまつりぬ、


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