日蓮大聖人御書
ネット御書
(種種御振舞御書)
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頚を刎られんとせし時は長一丈の月と顕われさせ給い、伝教大師の法華経をかうぜさせ給いし時はむらさきの袈裟を御布施にさづけさせ給いき、今日蓮は日本第一の法華経の行者なり其の上身に一分のあやまちなし、日本国の一切衆生の法華経を謗じて無間大城におつべきをたすけんがために申す法門なり、又大蒙古国よりこの国をせむるならば天照太神正八幡とても安穏におはすべきか、其の上釈迦仏法華経を説き給いしかば多宝仏十万の諸仏菩薩あつまりて日と日と月と月と星と星と鏡と鏡とをならべたるがごとくなりし時、無量の諸天並びに天竺漢土日本国等の善神聖人あつまりたりし時、各各法華経の行者にをろかなるまじき由の誓状まいらせよとせめられしかば一一に御誓状を立てられしぞかし、さるにては日蓮が申すまでもなしいそぎいそぎこそ誓状の宿願をとげさせ給うべきにいかに此の処にはをちあわせ給はぬぞとたかだかと申す、さて最後には日蓮今夜頚切られて霊山浄土へまいりてあらん時はまづ天照太神正八幡こそ起請を用いぬかみにて候いけれとさしきりて教主釈尊に申し上げ候はんずるぞいたしとおぼさばいそぎいそぎ御計らいあるべしとて又馬にのりぬ。
ゆいのはまにうちいでて御りやうのまへにいたりて又云くしばしとのばらこれにつぐべき人ありとて、中務三郎左衛門尉と申す者のもとへ熊王と申す童子をつかわしたりしかばいそぎいでぬ、今夜頚切られへまかるなり、この数年が間願いつる事これなり、此の娑婆世界にしてきじとなりし時はたかにつかまれねずみとなりし時はねこにくらわれき、或はめこのかたきに身を失いし事大地微塵より多し、法華経の御ためには一度だも失うことなし、されば日蓮貧道の身と生れて父母の孝養心にたらず国の恩を報ずべき力なし、今度頚を法華経に奉りて其の功徳を父母に回向せん其のあまりは弟子檀那等にはぶくべしと申せし事これなりと申せしかば、左衛門尉兄弟四人馬の口にとりつきてこしごへたつの口にゆきぬ、此にてぞ有らんずらんとをもうところに案にたがはず兵士どもうちまはりさわぎしかば、左衛門尉申すやう只今なりとなく、日蓮申すやう不かくのとのばらかな


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