行敏御返事

行敏御返事         /文永八年七月 五十歳御作

+                    与浄土僧行敏

      行敏初度の難状

 未だ見参に入らずと雖も事の次を以て申し承るは常の習に候か、抑風聞の如くんば所立の義尤も以て不審なり

、法華の前に説ける一切の諸経は皆是妄語にして出離の法に非ずと是一、大小の戒律は世間を誑惑して悪道に堕

せしむるの法と是二、念仏は無間地獄の業為と是三、禅宗は天魔の説若し依つて行ずる者は悪見を増長すと是四

、事若し実ならば仏法の怨敵なり、仍て対面を遂げて悪見を破らんと欲す、将又其の義無くんば争でか悪名を痛

ませられざらんや、是非に付き委く示し賜わる可きなり、恐恐謹言。

= 七月八日                               僧行敏花押

%   日蓮阿闍梨御房