土木殿御返事

土木殿御返事        /文永八年九月 五十歳御作

+                   於相模依智

 上のせめさせ給うにこそ法華経を信じたる色もあらわれ候へ、月はかけてみちしをはひてみつる事疑なし此れ

も罰あり必ず徳あるべしなにしにかなげかん。

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 此の十二日酉の時御勘気武蔵の守殿御あづかりにて十三日丑の時にかまくらをいでて佐土の国へながされ候が

、たうじはほんまのえちと申すところにえちの六郎佐衛門尉殿の代官右馬太郎と申す者あづかりて候が、いま四

五日はあるべげに候、御歎きはさる事に候へどもこれには一定と本よりごして候へばなげかず候、いままで頚の

切れぬこそ本意なく候へ、法華経の御ゆへに過去に頚をうしないたらばかかる少身のみにて候べきか、又数数見

擯出ととかれて度度失にあたりて重罪をけしてこそ仏にもなり候はんずれば我と苦行をいたす事は心ゆへなり。

=  九月十四日                日蓮花押

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