御衣並単衣御書

御衣並単衣御書 /建治元年 五十四歳御作

 御衣の布並びに御単衣給び候い畢んぬ鮮白比丘尼と申せし人は生れさせ給いて御衣をたてまつりたりけり、生

長するほどに次第にこの衣大になりけり、後に尼とならせ給いければ法衣となりにけり、ついに法華経の座にし

て記をさづかる一切衆生喜見如来これなり、又法華経を説く人は柔和忍辱衣と申して必ず衣あるべし、物たね

と申すもの一なれども植えぬれば多くとなり竜は小水を多雨となし人は小火を大火となす、衣かたびらは一なれ

ども法華経にまいらせ給いぬれば法華経の文字は六万九千三百八十四字一字は一仏なり、此の仏は再生敗種を心

符とし顕本遠寿を其の寿とし常住仏性を咽喉とし一乗妙行を眼目とせる仏なり、応化非真仏と申して三十二相八

十種好の仏よりも法華経の文字こそ真の仏にてはわたらせ給いて仏在世に仏を信ぜし人は仏にならざる人もあり

、仏の滅後に法華経を信ずる人は無一不成仏如来の金言なり、この衣をつくりてかたびらをきそえて法華経をよ

みて候わば日蓮は無戒の比丘なり法華経は正直の金言なり、毒蛇の珠をはき伊蘭の栴檀をいだすがごとし、恐恐

謹言。

= 九月二十八日                   日  蓮 花 押

%  御 返 事

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