兵衛志殿女房御返事

兵衛志殿女房御返事

銅の御器二給び畢んぬ、釈迦仏三十の御年仏になり始てをはし候時牧牛女と申せし女人乳のかいをにて仏にま

いらせんとし候し程にいれてまいらすべき器なし、毘沙門天王等の四天王四鉢を仏にまいらせたりし、其の鉢を

うちかさねてかいをまいらせしに仏にはならせ給う、其の鉢後には人ももらざりしかども常に飯のみちしなり後

に馬鳴菩薩と申せし菩薩伝へて金銭三貫にほうじたりしなり、今御器二を千里にをくり釈迦仏にまいらせ給へば

、かの福のごとくなるべし、委しくは申さず候。

= 建治三年丁丑十一月七日 日蓮花押

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