四条金吾殿御返事

四条金吾殿御返事

 一切衆生南無妙法蓮華経と唱うるより外の遊楽なきなり経に云く「衆生所遊楽」云云、此の文あに自受法楽に

あらずや、衆生のうちに貴殿もれ給うべきや、所とは一閻浮提なり日本国は閻浮提の内なり、遊楽とは我等が色

心依正ともに一念三千自受用身の仏にあらずや、法華経を持ち奉るより外に遊楽はなし現世安穏後生善処とは是

なり、ただ世間の留難来るともとりあへ給うべからず、賢人聖人も此の事はのがれず、ただ女房と酒うちのみて

南無妙法蓮華経ととなへ給へ、苦をば苦とさとり楽をば楽とひらき苦楽ともに思い合せて南無妙法蓮華経とうち

となへゐさせ給へ、これあに自受法楽にあらずや、いよいよ強盛の信力をいたし給へ、恐恐謹言。

=   建治二年丙子六月二十七日       日蓮花押

%   四条金吾殿御返事

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