王日女殿御返事

王日女殿御返事    /弘安三年 五十九歳御作

 弁房の便宜に三百文今度二百文給び畢んぬ、仏は真に尊くして物によらず、昔の得勝童子は沙の餅を仏に供養

し奉りて阿育大王と生れて一閻浮提の主たりき、貧女の我がかしらをおろして油と成せしが須弥山を吹きぬきし

風も此の火をけさず、されば此の二三の鵞目は日本国を知る人の国を寄せ七宝の塔を利天にくみあげたらんに

もすぐるべし、法華経の一字は大地の如し万物を出生す、一字は大海の如し衆流を納む一字は日月の如し四天下

を照す、此の一字変じて仏となる、稲変じて苗となる苗変じて草となる草変じて米となる米変じて人となる人変

じて仏となる女人変じて妙の一字となる妙の一字変じて台上の釈迦仏となるべし、南無妙法蓮華経南無妙法蓮華

経、恐恐謹言。

%  王日殿                      日蓮花押

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