窪尼御前御返事

窪尼御前御返事 /弘安三年六月 五十九歳御作

 仏の御弟子の中にあなりち(阿那律)と申せし人はこくぼん王の御子いえにたからをみてておはしき、のちに

仏の御でしとなりては天眼第一のあなりちとて三千大千世界を御覧ありし人、法華経の座にては普明如来となら

せ給う、そのさきのよの事をたづぬればひえのはんを辟支仏と申す仏の弟子にくやうせしゆへなり、いまの比丘

尼はあわのわさごめ山中にをくりて法華経にくやうしまいらせ給う、いかでか仏にならせ給はざるべき、恐恐謹

言。

= 六月二十七日      日 蓮 花 押

%  くぼの尼御前御返事