上野殿御返事

上野殿御返事   /建治元年七月 五十四歳御作

 むぎひとひつかわのり五条はじかみ六十給了んぬ、いつもの御事に候へばをどろかれずめづらしからぬやうに

うちをぼへて候はぼむぶの心なり、せけんそうそうなる上ををみやつくられさせ給へば百姓と申し我が内の者と

申しけかちと申しものつくりと申しいくそばくいとまなく御わたりにて候らむに山のなかのすまゐさこそと思ひ

やらせ給いて鳥のかい子をやしなふが如く灯に油をそふるがごとくかれたる草に雨のふるが如くうへたる子に乳

をあたふるが如く法華経の御命をつがせ給う事三世の諸仏を供養し給へるにてあるなり、十方の衆生の眼を開く

功徳にて候べし、尊しとも申す計りなし、あなかしこあなかしこ恐恐謹言。

=   七月十二日                日蓮花押

%    進上 上野殿御返事

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