日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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真言天台勝劣事

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指して顕教と云いて権大乗までは云わず況や法華実大乗までは都て云わざるなり。

 次に釈迦は大日の化身・字を教えられてこそ仏には成りたれと云う事此は偏に六波羅蜜経の説なり、彼の経一部十巻は是れ釈迦の説なり大日の説には非ず是れ未顕真実の権教なり随つて成道の相も三蔵経の教主の相なり六年苦行の後の儀式なるをや、彼の経説の五味を天台は盗み取つて己が宗に立つると云う無実を云い付けらるるは弘法大師の大なる僻事なり、所以に天台は涅槃経に依つて立て給へり全く六波羅蜜経には依らず況んや天台死去の後百九十年あつて貞元四年に渡る経なり何として天台は見給うべき不実の過弘法大師にあり、凡そ彼の経説は皆未顕真実なり之を以て法華経を下さん事甚だ荒量なり、猶難じて云く如何に云うとも印真言三摩耶尊形を説く事は大日経程法華経には之無く事理倶密の談は真言ひとりすぐれたり、其の上真言の三部経は釈迦一代五時の摂属に非ずされば弘法大師の宝鑰には釈摩訶衍論を証拠として法華は無明の辺域戯論の法と釈し給へり爰を以て法華劣り真言勝ると申すなり、答う凡そ印相尊形は是れ権経の説にして実教の談に非ず設い之を説くとも権実大小の差別浅深有るべし、所以に阿含経等にも印相有るが故に必ず法華に印相尊形を説くことを得ずして之を説かざるに非ず説くまじければ是を説かぬにこそ有れ法華は只三世十方の仏の本意を説いて其形がとあるかうあるとは云う可からず、例せば世界建立の相を説かねばとて法華は倶舎より劣るとは云う可からざるが如し、次に事理倶密の事法華は理秘密真言は事理倶密なれば勝るとは何れの経に説けるや抑法華の理秘密とは何様の事ぞや、法華の理とは迹門開権顕実の理か其の理は真言には分絶えて知らざる理なり、法華の事とは又久遠実成の事なり此の事又真言になし真言に云う所の事理は未開会の権教の事理なり何ぞ法華に勝る可きや、次に一代五時の摂属に非ずと云う事是れ往古より諍なり唐決には四教有るが故に方等部に摂すと云へり、教時義には一切智智一味の開会を説くが故に法華の摂と云へり、二義の中に方等の摂と云うは吉き義なり、所以に一切智智一味の文を以て


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満月城岡山ポケット版御書