日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

下山御消息

<前 P0363 次>


たとひ鉄囲山を日本国に引回し須弥山を蓋として十方世界の四天王を集めて波際に立て並べてふせがするとも法華経の敵となり教主釈尊より大事なる行者を法華経の第五の巻を以て日蓮が頭を打ち十巻共に引き散して散散に・たりし大禍は現当二世にのがれがたくこそ候はんずらめ日本守護の天照太神正八幡等もいかでかかかる国をばたすけ給うべきいそぎいそぎ治罰を加えて自科を脱がれんとこそはげみ給うらめをそく科に行う間日本国の諸神ども四天大王にいましめられてやあるらん知り難き事なり教大師云く「竊に以れば菩薩は国の宝なること法華経に載せ大乗の利他は摩訶衍の説なり弥天の七難は大乗経に非ずんば何を以てか除くことを為ん、未然の大災は菩薩僧に非ずんば豈冥滅することを得んや」等云云、而るを今大蒙古国を調伏する公家武家の日記を見るに或は五大尊或は七仏薬師或は仏眼或は金輪等云云、此れ等の小法は大災を消すべしや還著於本人と成りて国忽に亡びなんとす、或は日吉の社にして法華の護摩を行うといへども不空三蔵が・れる法を本として行う間祈祷の儀にあらず、又今の高僧等は或は東寺の真言或は天台の真言なり東寺は弘法大師天台は慈覚智証なり、此の三人は上に申すが如く大謗法の人人なり、其れより已外の諸僧等は或は東大寺の戒壇の小乗の者なり、叡山の円頓戒は又慈覚の謗法に曲げられぬ彼の円頓戒も迹門の大戒なれば今の時の機にあらず旁叶うべき事にはあらず、只今国土やぶれなん後悔さきにたたじ不便不便と語り給いしを千万が一を書き付けて参らせ候。

 但し身も下賎に生れ心も愚に候へば此の事は道理かとは承わり候へども国主も御用いなきかの故に鎌倉にては如何が候けん不審に覚え候、返す返すも愚意に存じ候はこれ程の国の大事をばいかに御尋ねもなくして両度の御勘気には行はれけるやらんと聞食しほどかせ給はぬ人人の或は道理とも或は僻事とも仰せあるべき事とは覚え候はず、又此の身に阿弥陀経を読み候はぬも併ら御為父母の為にて候、只理不尽に読むべき由を仰せを蒙り候はば其の時重ねて申すべく候、いかにも聞食さずしてうしろの推義をなさん人人の仰せをばたとひ身は随う様に候えども


<前 P0363 次>


満月城岡山ポケット版御書