日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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諸宗問答抄

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*諸宗問答抄

  /建長七年 三十四歳御作

+             与三位房日行

 問うて云く抑法華宗の法門は天台妙楽伝教等の御釈をば御用い候や如何、答て云く最も此の御釈共を明鏡の助証として立て申す法門にて候、問て云く何を明鏡として立てられ候ぞや彼の御釈共には爾前権教を簡び捨てらる事候はず、随つて或は初後仏慧円頓義斉とも或は此妙彼妙妙義殊なること無しとも釈せられて華厳と法華との仏慧同じ仏慧にて異なること無しと釈せられ候、通教別教の仏慧も法華と同じと見えて候何を以て偏に法華勝れたりとは仰せられ候や意得ず候如何、答て云く天台の御釈を引かれ候は定て天台宗にて御坐候らん、然るに天台の御釈には教道証道とて二筋を以て六十巻を造られて候、教道は即教相の法門にて候証道は即内証の悟の方にて候、只今引れ候釈の文共は教証の二道の中には何れの文と御得意候て引かれ候ぞや、若し教門の御釈にて候わば教相には三種の教相を立て爾前法華を釈して勝劣を判ぜられ候、先づ三種の教相と申すは何にて候ぞやと之を尋ぬ可し、若し三種の教相と申すは一には根性の融不融の相二には化導の始終不始終の相三には師弟の遠近不遠近の相なりと答へばさては只今引かれ候御釈は何れの教相の下にて引かれ候やと尋ぬ可きなり、若し根性の融不融の下にて釈せらると答へば又押し返して問う可し根性の融不融の下には約教約部とて二の法門あり何れぞと尋ぬ可し、若し約教の下と答へば又問う可し約教約部に付いて与奪の二の釈候只今の釈は与の釈なるか奪の釈なるかと之を尋ね可し、若し約教約部をも与奪をも弁えずと云わばさてはさては天台宗の法門は堅固に無沙汰にて候けり、尤も天台法華の法門は教相を以て諸仏の御本意を宣られたり若し教相に闇くして法華の法門を云ん者は雖讃法華経還死法華心とて法華の心を殺すと云う事にて候、其の上「若し余経を弘むるに


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