日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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一念三千法門

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法華経は念念に一心三観一念三千の謂を観ずれば我が身本覚の如来なること悟り出され無明の雲晴れて法性の月明かに妄想の夢醒て本覚の月輪いさぎよく父母所生の肉身煩悩具縛の身即本有常住の如来となるべし、此を即身成仏とも煩悩即菩提とも生死即涅槃とも申す、此の時法界を照し見れば悉く中道の一理にて仏も衆生も一なり、されば天台の所釈に「一色一香中道に非ざること無し」と釈し給へり、此の時は十方世界皆寂光浄土にて何れの処をか弥陀薬師等の浄土とは云わん、是を以て法華経に「是の法は法位に住して世間の相常住なり」と説き給ふさては経をよまずとも心地の観念計りにて成仏す可きかと思いたれば一念三千の観念も一心三観の観法も妙法蓮華経の五字に納れり、妙法蓮華経の五字は又我等が一心に納りて候けり、天台の所釈に「此の妙法蓮華経は本地甚深の奥蔵三世の如来の証得したもう所なり」と釈したり、さて此の妙法蓮華経を唱うる時心中の本覚の仏顕る我等が身と心をば蔵に譬へ妙の一字を印に譬へたり、天台の御釈に「秘密の奥蔵を発く之を称して妙と為す権実の正軌を示す故に号して法と為す、久遠の本果を指す之を喩うるに蓮を以てす、不二の円道に会す之を譬うるに華を以てす、声仏事を為す之を称して経と為す」と釈し給う、又「妙とは不可思議の法を褒美するなり又妙とは十界十如権実の法なり」と云云、経の題目を唱うると観念と一なる事心得がたしと愚癡の人は思い給ふべし、されども天台止の二に而於説黙と云へり、説とは経黙とは観念なり、又四教義の一に云く「但功の唐捐ならざるのみに非ず亦能く理に契うの要なるをや」と云云、天台大師と申すは薬王菩薩なり此の大師の説而観而と釈し給ふ元より天台の所釈に因縁約教本迹観心の四種の御釈あり四種の重を知らずして一しなを見たる人一向本迹をむねとし一向観心を面とす、法華経に法譬因縁と云う事あり法説の段に至つて諸仏出世の本懐一切衆生成仏の直道と定む、我のみならず一切衆生直至道場の因縁なりと定め給いしは題目なり、されば天台玄の一に「衆善の小行を会して広大の一乗に帰す」と広大と申すは残らず引導し給うを申すなり、仮使釈尊一人本懐と宣べ給うとも


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