日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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三世諸仏総勘文教相廃立 /弘安二年十月

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故に守護国界章に云く「有為の報仏は夢中の権果[前三教の修行の仏]無作の三身は覚前の実仏なり[後の円教の観心の仏]」又云く「権教の三身は未だ無常を免れず[前三教の修行の仏]実教の三身は倶体倶用なり[後の円教の観心の仏]」此の釈を能く能く意得可きなり、権教は難行苦行して適仏に成りぬと思えば夢中の権の仏なれば本覚の寤の時には実仏無きなり、極果の仏無ければ有教無人なり況や教法実ならんや之を取つて修行せんは聖教に迷えるなり、此の前三教には仏に成らざる証拠を説き置き給いて末代の衆生に慧解を開かしむるなり九界の衆生は一念の無明の眠の中に於て生死の夢に溺れて本覚の寤を忘れ夢の是非に執して冥きより冥きに入る、是の故に如来は我等が生死の夢の中の入つて顛倒の衆生に同じて夢中の語を以て夢中の衆生を誘い夢中の善悪の差別の事を説いて漸漸に誘引し給うに、夢中の善悪の事重畳して様様に無量無辺なれば先ず善事に付いて上中下を立つ三乗の法是なり、三三九品なり、此くの如く説き已つて後に又上上品の根本善を立て上中下三三九品の善と云う、皆悉く九界生死の夢の中の善悪の是非なり今是をば総じて邪見外道と為す[捜要記の意]、此の上に又上上品の善心は本覚の寤の理なれば此れを善の本と云うと説き聞かせ給し時に夢中の善悪の悟の力を以ての故に寤の本心の実相の理を始めて聞知せられし事なり、是の時に仏説いて言く夢と寤との二は虚事と実事との二の事なれども心法は只一なり、眠の縁に値いぬれば夢なり眠去りぬれば寤の心なり心法は只一なりと開会せらるべき下地を造り置かれし方便なり[此れは別教の中道の理]是の故に未だ十界互具円融相即を顕さざれば成仏の人無し故に三蔵教より別教に至るまで四十二年の間の八教は皆悉く方便夢中の善悪なり、只暫く之を用いて衆生を誘引し給う支度方便なり此の権教の中にも分分に皆悉く方便と真実と有りて権実の法闕けざるなり、四教一一に各四門有つて差別有ること無し語も只同じ語なり文字も異ること無し斯れに由つて語に迷いて権実の差別を分別せざる時を仏法滅すと云う是の方便の教は唯穢土に有つて総じて浄土には無きなり法華経に云く「十方の仏土の中には唯一乗の法のみ有つて二無く亦三も無し仏の方便の説をば除く」已上、


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満月城岡山ポケット版御書