日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

滝泉寺申状

<前 P0850 次>


 当寺院主代平左近入道行智条条の自科を塞ぎ遮らんが為に不実の濫訴を致す謂れ無き事。

 訴状に云く日秀日弁日蓮房の弟子と号し法華経より外の余経或は真言の行人は皆以て今世後世叶う可からざるの由之を申す云云[取意]。

 此の条は日弁等の本師日蓮聖人去る正嘉以来の大彗星大地動等を観見し一切経を勘えて云く当時日本国の体たらく権小に執著し実経を失没せるの故に当に前代未有の二難を起すべし所謂自界叛逆難他国侵逼難なり、仍て治国の故を思い兼日彼の大災難を対治せらる可きの由、去る文応年中一巻の書を上表す立正安国論と号す勘え申す所皆以て符合す既に金口の未来記に同じ宛も声と響との如し、外書に云く「未萠を知るは聖人なり」内典に云く「智人は起を知り蛇は自ら蛇を知る」云云、之を以て之を思うに本師は豈聖人なるかな巧匠内に在り国宝外に求む可からず、外書に云く「隣国に聖人有るは敵国の憂なり」云云、内経に云く「国に聖人有れば天必ず守護す」云云、外書に云く「世必ず聖智の君有り而して復賢明の臣有り」云云、此の本文を見るに聖人国に在るは日本国の大喜にして蒙古国の大憂なり諸竜を駆り催して敵舟を海に沈め梵釈に仰せ付けて蒙王を召し取るべし、君既に賢人に在さば豈聖人を用いずして徒に他国の逼を憂えん。

 抑大覚世尊遥に末法闘諍堅固の時を鑒み此くの如きの大難を対治す可きの秘術を説き置かせらるるの経文明明たり、然りと雖も如来の滅後二千二百二十余年の間身毒尸那扶桑等一閻浮提の内に未だ流布せず、随つて四依の大士内に鑒みて説かず天台伝教而も演べず時未だ至らざるの故なり、法華経に云く「後の五百歳の中に閻浮提に広宣流布す」云云、天台大師云く「後五百歳」妙楽云く「五五百歳」伝教大師云く「代を語れば則ち像の終り末の初め地を尋ぬれば唐の東羯の西人を原ぬれば則五濁の生闘諍の時」云云、東勝西負の明文なり。

 法主聖人時を知り国を知り法を知り機を知り君の為臣の為神の為仏の為災難を対治せらる可きの由勘え申すと雖も御信用無きの上


<前 P0850 次>


満月城岡山ポケット版御書