日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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滝泉寺申状

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乃至余経の一偈をも受けざれ」云云、妙楽大師云く「況や彼の華厳但以て称比せん此の経の法を以て之を化するに同じからず故に乃至不受余経一偈と云う」云云、彼の華厳経は寂滅道場の説法界唯心の法門なり、上本は十三世界微塵品中品は四十九万八千偈下本は十万偈四十八品今現に一切経蔵を観るに唯八十六十四十等の経なり、其の外の方等般若大日経金剛頂経等の諸の顕密大乗経等を尚法華経に対当し奉りて仏自ら或は未顕真実と云い或は留難多きが故に或は門を閉じよ或は抛て等云云、何に況や阿弥陀経をや、唯大山と蟻岳との高下師子王と狐兎との・力なり。

 今日秀等専ら彼等小経を抛ち専ら法華経を読誦し法界に勧進して南無妙法蓮華経と唱え奉る豈殊忠に非ずや、此等の子細御不審を相貽さば高僧等を召され是非を決せらる可きか、仏法の優劣を糺明致す事は月氏漢土日本の先例なり、今明時に当つて何ぞ三国の旧規に背かんや。

 訴状に云く今月二十一日数多の人勢を催し弓箭を帯し院主分の御坊内に打ち入り下野坊は乗馬相具し熱原の百姓紀次郎男点札を立て作毛を苅り取り日秀の住房に取り入れ畢んぬ云云[取意]。

 此の条跡形も無き虚誕なり日秀等は損亡せられし行者なり不安堵の上は誰の人か日秀等の点札を叙用せしむ可き将た又・弱なる土民の族日秀等に雇い越されんや、然らば弓箭を帯し悪行を企つるに於ては行智云く近隣の人人争つて弓箭を奪い取り其の身に召し取ると云うが如き子細を申さざるや、矯飾の至り宜しく賢察に足るべし。

 日秀日弁等は当寺代代の住侶として行法の薫修を積み天長地久の御祈祷を致すの処に行智は乍に当寺霊地の院主代に補し寺家三河房頼円並に少輔房日禅日秀日弁等に行智より仰せて、法華経に於ては不信用の法なり速に法華経の読誦を停止し一向に阿弥陀経を読み念仏を申す可きの由の起請文を書けば安堵す可きの旨下知せしむるの間、


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満月城岡山ポケット版御書