日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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光日房御書

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彼の燕のたむ太子の馬烏のれい日蔵上人の山がらすかしらもしろくなりにけり、我がかへるべき時やきぬらんとながめし此れなりと申しもあへず、文永十一年二月十四日の御赦免状同三月八日に佐渡の国につきぬ同十三日に国を立ちてまうらというつにをりて十四日はかのつにとどまり、同じき十五日に越後の寺どまりのつにつくべきが大風にはなたれさいわひにふつかぢ(二日程)をすぎてかしはざきにつきて、次の日はこうにつき中十二をへて三月二十六日に鎌倉へ入りぬ、同じき四月八日に平左衛門尉に見参す、本よりごせし事なれば日本国のほろびんを助けんがために三度いさめんに御用いなくば山林にまじわるべきよし存ぜしゆへに同五月十二日に鎌倉をいでぬ。

 但し本国にいたりて今一度父母のはかをもみんとをもへどもにしきをきて故郷へはかへれといふ事は内外のをきてなり、させる面目もなくして本国へいたりなば不孝の者にてやあらんずらん、これほどのかたかりし事だにもやぶれてかまくらへかへり入る身なれば又にしきをきるへんもやあらんずらん、其の時父母のはかをもみよかしとふかくおもうゆへにいまに生国へはいたらねどもさすがこひしくて吹く風立つくもまでも東のかたと申せば庵をいでて身にふれ庭に立ちてみるなり、かかる事なれば故郷の人は設い心よせにおもはぬ物なれども我が国の人といへばなつかしくてはんべるところに此の御ふみを給びて心もあらずしていそぎいそぎひらきてみ候へばをととし(一昨年)の六月の八日にいや四郎にをくれてとかかれたり、御ふみもひらかざりつるまではうれしくてありつるが、今此のことばをよみてこそなにしにかくいそぎひらきけんうらしまが子のはこなれやあけてくやしきものかな、我が国の事はうくつらくあたりし人のすへまでもをろかならずをもうにことさら此の人は形も常の人にはすぎてみへうちをもひたるけしきもかたくなにもなしと見えしかども、さすが法華経のみざなればしらぬ人人あまたありしかば言もかけずありしに、経はてさせ給いて皆人も立ちかへる、此の人も立ちかへりしが使を入れて申せしは安房の国のあまつと申すところの者にて候が、をさなくより御心ざしをもひまいらせて候上


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満月城岡山ポケット版御書