日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

法華経題目抄

<前 P0948 次>


女人は法華経をはなれて仏になるべからずと定めさせ給いぬ。

 尸那国より三千里をへだてて東方に国あり日本国となづけたり、天台大師御入滅二百余年と申せしに此の国に生れて伝教大師となのらせ給いて秀句と申す書を造り給いしに「能化所化倶に歴劫無し妙法経の力にて即身に成仏す」と竜女が成仏を定め置き給いたり、而るに当世の女人は即身成仏こそかたからめ往生極楽は法華を憑まば疑いなし、譬えば江河の大海に入るよりもたやすく雨の空より落つるよりもはやくあるべき事なり、而るに日本国の一切の女人は南無妙法蓮華経とは唱へずして女人の往生成仏をとげざる雙観観経等によりて弥陀の名号を一日に六万遍十万遍なんどとなうるは、仏の名号なれば巧なるには似たれども女人不成仏不往生の経によれるが故にいたずらに他の財を数えたる女人なり、これひとえに悪知識にたぼらかされたるなり、されば日本国の一切の女人の御かたきは虎狼よりも山賊海賊よりも父母の敵とわり等よりも法華経をばをしえずして念仏ををしゆるこそ一切の女人のかたきなれ。

 南無妙法蓮華経と一日に六万十万千万等も唱えて後に暇あらば時時阿弥陀等の諸仏の名号をも口ずさみなるやうに申し給はんこそ法華経を信ずる女人にてはあるべきに当世の女人は一期の間弥陀の名号をばしきりにとなへ念仏の仏事をばひまなくをこなひ法華経をばつやつや唱へず供養せず或はわづかに法華経を持経者によますれども念仏者をば父母兄弟なんどのやうにをもひなし持経者をば所従眷属よりもかろくをもへり、かくしてしかも法華経を信ずる由をなのるなり、抑も浄徳夫人は二人の太子の出家を許して法華経をひろめさせ竜女は「我闡大乗教度脱苦衆生」とこそ誓ひしが全く他経計りを行じて此の経を行ぜじとは誓はず、今の女人は偏に他経を行じて法華経を行ずる方をしらず、とくとく心をひるがへすべし心をひるがへすべし、南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。                     日蓮花押


<前 P0948 次>


満月城岡山ポケット版御書