日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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富木殿御書

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天親菩薩は舌を切らんと云い馬鳴菩薩は頭を刎ねんと願い吉蔵大師は身を肉橋と為し玄奘三蔵は此れを霊地に占い不空三蔵は疑いを天竺に決し伝教大師は此れを異域に求む皆上に挙ぐる所は経論を守護する故か。

 今日本国の八宗並びに浄土禅宗等の四衆上主上上皇より下臣下万民に至るまで皆一人も無く弘法慈覚智証の三大師の末孫檀越なり、円仁慈覚大師云く「故に彼と異り」円珍智証大師云く「華厳法華を大日経に望むれば戯論と為す」空海弘法大師云く「後に望むれば戯論と為す」等と云云、此の三大師の意は法華経は已今当の諸経の中の第一なり然りと雖も大日経に相対すれば戯論の法なり等云云、此の義心有らん人信を取る可きや不や。

今日本国の諸人悪象悪馬悪牛悪狗毒蛇悪刺懸岸険崖暴水悪人悪国悪城悪舎悪妻悪子悪所従等よりも此に超過し以て恐怖すべきこと百千万億倍なれば持戒邪見の高僧等なり、問うて云く上に挙げる所の三大師を謗法と疑うか叡山第二の円澄寂光大師別当光定大師安慧大楽大師慧亮和尚安然和上浄観僧都檀那僧正慧心先徳此等の数百人、弘法の御弟子実慧真済真雅等の数百人並びに八宗十宗等の大師先徳日と日と月と月と星と星と並びに出でたるが如し、既に四百余年を経歴するに此等の人人一人として此の義を疑わず汝何なる智を以て之を難ずるや云云。

 此等の意を以て之を案ずるに我が門家は夜は眠りを断ち昼は暇を止めて之を案ぜよ一生空しく過して万歳悔ゆること勿れ、恐恐謹言。

= 八月二十三日                    日  蓮 花 押

   富 木 殿

 鵞目一結給び候畢んぬ、志有らん諸人は一処に聚集して御聴聞有るべきか。


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満月城岡山ポケット版御書