日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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転重軽受法門 /文永八年十月

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理即名字の人は円人なれども言のみありて真なる事かたし、例せば外典の三墳五典には読む人かずをしらず、かれがごとくに世ををさめふれまう事千万が一つもかたしされば世のをさまる事も又かたし、法華経は紙付に音をあげてよめども彼の経文のごとくふれまう事かたく候か、譬喩品に云く「経を読誦し書持すること有らん者を見て軽賎憎嫉して結恨を懐かん」法師品に云く「如来現在すら猶怨嫉多し況や滅度の後をや」勧持品に云く「刀杖を加え乃至数数擯出せられん」安楽行品に云く「一切世間怨多くして信じ難し」と、此等は経文には候へども何世にかかるべしともしられず、過去の不軽菩薩覚徳比丘なんどこそ身にあたりてよみまいらせて候いけるとみへはんべれ、現在には正像二千年はさてをきぬ、末法に入つては此の日本国には当時は日蓮一人みへ候か、昔の悪王の御時多くの聖僧の難に値い候いけるには又所従眷属等弟子檀那等いくぞばくかなげき候いけんと今をもちてをしはかり候、今日蓮法華経一部よみて候一句一偈に猶受記をかほれり何に況や一部をやと、いよいよたのもし、但おほけなく国土までとこそをもひて候へども我と用いられぬ世なれば力及ばず、しげきゆへにとどめ候い了んぬ。

= 文永八年辛未十月五日 日蓮花押

%   大田左衛門尉殿

%   蘇谷入道殿

%   金原法橋御房

%   御返事


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