日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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兄弟抄

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次第に堕ちゆきて後には人天の善根後に悪にをちぬ、かくのごとく堕ちゆく程に三千塵点劫が間、多分は無間地獄少分は七大地獄たまたまには一百余の地獄まれには餓鬼畜生修羅なんどに生れ大塵点劫なんどを経て人天には生れ候けり。

 されば法華経の第二の巻に云く「常に地獄に処すること園観に遊ぶが如く余の悪道に在ること己が舎宅の如し」等云云、十悪をつくる人は等活黒繩なんど申す地獄に堕ちて五百生或は一千歳を経、五逆をつくれる人は無間地獄に堕ちて一中劫を経て後は又かへりて生ず、いかなる事にや候らん法華経をすつる人はすつる時はさしも父母を殺すなんどのやうにをびただしくはみへ候はねども無間地獄に堕ちては多劫を経候、設父母を一人二人十人百人千人万人十万人百万人億万人なんど殺して候ともいかんが三千塵点劫をば経候べき、一仏二仏十仏百仏千仏万仏乃至億万仏を殺したりともいかんが五百塵点劫をば経候べき、しかるに法華経をすて候いけるつみによりて三周の声聞が三千塵点劫を経諸大菩薩の五百塵点劫を経候けることをびただしくをぼへ候、せんするところは・をもつて虚空を打てばくぶしいたからず石を打てばくぶしいたし、悪人を殺すは罪あさし善人を殺すは罪ふかし或は他人を殺すは・をもつて泥を打つがごとし父母を殺すは・をもつて石を打つがごとし、鹿をほうる犬は頭われず師子を吠る犬は腸くさる日月をのむ修羅は頭七分にわれ仏を打ちし提婆は大地われて入りにき、所対によりて罪の軽重はありけるなり。

 さればこの法華経は一切の諸仏の眼目教主釈尊の本師なり、一字一点もすつる人あれば千万の父母を殺せる罪にもすぎ十方の仏の身より血を出す罪にもこへて候けるゆへに三五の塵点をば経候けるなり此の法華経はさてをきたてまつりぬ又此の経を経のごとくにとく人に値うことは難にて候、設い一眼の亀の浮木には値うともはちすのいとをもつて須弥山をば虚空にかくとも法華経を経のごとく説く人にあひがたし。


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