日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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崇峻天皇御書

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とくとく此の四人かたらひて日蓮にきかせ給へさるならば強盛に天に申すべし、又殿の故御父御母の御事も左衛門の尉があまりに歎き候ぞと天にも申し入れて候なり、定めて釈迦仏の御前に子細候らん。

 返す返す今に忘れぬ事は頚切れんとせし時殿はともして馬の口に付きてなきかなしみ給いしをばいかなる世にか忘れなん、設い殿の罪ふかくして地獄に入り給はば日蓮をいかに仏になれと釈迦仏こしらへさせ給うとも用ひまいらせ候べからず同じく地獄なるべし、日蓮と殿と共に地獄に入るならば釈迦仏法華経も地獄にこそをはしまさずらめ、暗に月の入るがごとく湯に水を入るるがごとく冰に火をたくがごとく日輪にやみをなぐるが如くこそ候はんずれ、若しすこしも此の事をたがへさせ給うならば日蓮うらみさせ給うな。

 此の世間の疫病はとののまうすがごとく年帰りなば上へあがりぬとをぼえ候ぞ、十羅刹の御計いか今且く世にをはして物を御覧あれかし、又世間のすぎえぬやうばし歎いて人に聞かせ給うな、若しさるならば賢人にははづれたる事なり、若しさるならば妻子があとにとどまりてはぢを云うとは思はねども、男のわかれのおしさに他人に向いて我が夫のはぢをみなかたるなり、此れ偏にかれが失にはあらず我がふるまひのあしかりつる故なり。

 人身は受けがたし爪の上の土人身は持ちがたし草の上の露、百二十まで持ちて名をくたして死せんよりは生きて一日なりとも名をあげん事こそ大切なれ、中務三郎左衛門尉は主の御ためにも仏法の御ためにも世間の心ねもよかりけりよかりけりと鎌倉の人人の口にうたはれ給へ、穴賢穴賢、蔵の財よりも身の財すぐれたり身の財より心の財第一なり、此の御文を御覧あらんよりは心の財をつませ給うべし。

 第一秘蔵の物語あり書きてまいらせん、日本始りて国王二人人に殺され給う、其の一人は崇峻天皇なり、此の王は欽明天皇の御太子聖徳太子の伯父なり、人王第三十三代の皇にてをはせしが聖徳太子を召して勅宣下さる、


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満月城岡山ポケット版御書