日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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月水御書

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余の二十六品は身に影の随ひ玉に財の備わるが如し、寿量品方便品をよみ候へば自然に余品はよみ候はねども備はり候なり、薬王品提婆品は女人の成仏往生を説かれて候品にては候へども提婆品は方便品の枝葉薬王品は方便品と寿量品の枝葉にて候、されば常には此の方便品寿量品の二品をあそばし候て余の品をば時時御いとまのひまにあそばすべく候。

 又御消息の状に云く日ごとに三度づつ七つの文字を拝しまいらせ候事と、南無一乗妙典と一万遍申し候事とをば日ごとにし候が、例の事に成つて候程は御経をばよみまいらせ候はず、拝しまいらせ候事も一乗妙典と申し候事もそらにし候は苦しかるまじくや候らん、それも例の事の日数の程は叶うまじくや候らん、いく日ばかりにてよみまいらせ候はんずる等と云云、此の段は一切の女人ごとの御不審に常に問せ給い候御事にて侍り、又古へも女人の御不審に付いて申したる人も多く候へども一代聖教にさして説かれたる処のなきかの故に証文分明に出したる人もおはせず、日蓮粗聖教を見候にも酒肉五辛 婬事なんどの様に不浄を分明に月日をさして禁めたる様に月水をいみたる経論を未だ勘へず候なり、在世の時多く盛んの女人尼になり仏法を行ぜしかども月水の時と申して嫌はれたる事なし、是をもつて推し量り侍るに月水と申す物は外より来れる不浄にもあらず、只女人のくせかたわ生死の種を継ぐべき理にや、又長病の様なる物なり例せば屎尿なんどは人の身より出れども能く 浄くなしぬれば別にいみもなし是体に侍る事か。

 されば印度尸那なんどにもいたくいむよしも聞えず、但し日本国は神国なり此の国の習として仏菩薩の垂迹不思議に経論にあひにぬ事も多く侍るに是をそむけば現に当罰あり、委細に経論を勘へ見るに仏法の中に随方毘尼と申す戒の法門は是に当れり、此の戒の心はいたう事かけざる事をば少少仏教にたがふとも其の国の風俗に違うべからざるよし仏一つの戒を説き給へり、此の由を知ざる智者共神は鬼神なれば敬ふべからずなんど申す強義を申して多くの檀那を損ずる事ありと見えて候なり、


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満月城岡山ポケット版御書