日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

妙法尼御前御返事

<前 P1403 次>


二返唱うるは二部乃至百返は百部千返は千部加様に不退に御唱え候はば不退に法華経を読む人にて候べく候、天台の六十巻と申す文には此のやうを釈せられて候、かかる持ちやすく行じやすき法にて候を末代悪世の一切衆生のために説きをかせ給いて候、経文に云く「於末法中於後末世法欲滅時受持読誦悪世末法時能持是経者後五百歳中広宣流布」と、此れ等の文の心は当時末法の代には法華経を持ち信ずべきよしを説かれて候、かかる明文を学しあやまりて日本漢土天竺の謗法の学匠達皆念仏者真言禅律の小乗権教には随い行じて法華経を捨てはて候ぬ、仏法にまどへるをばしろしめされず、形まことしげなれば云う事も疑ひあらじと計り御信用候間、をもはざるに法華経の敵釈迦仏の怨とならせ給いて今生には祈る所願も虚しく命もみじかく後生には無間大城をすみかとすべしと正しく経文に見えて候。

 さて此の経の題目は習い読む事なくして大なる善根にて候、悪人も女人も畜生も地獄の衆生も十界ともに即身成仏と説かれて候は、水の底なる石に火のあるが如く百千万年くらき所にも燈を入れぬればあかくなる、世間のあだなるものすら尚加様に不思議あり、何に況や仏法の妙なる御法の御力をや、我等衆生悪業煩悩生死果縛の身が、正了縁の三仏性の因によりて即法報応の三身と顕われん事疑ひなかるべし、妙法経力即身成仏と伝教大師も釈せられて候、心は法華経の力にてはくちなはの竜女も即身成仏したりと申す事なり御疑候べからず委くは見参に入り候て申すべく候と申させ給へ。

=弘安元年戊寅七月三日                    日蓮花押

%妙法尼御前御返事


<前 P1403 次>


満月城岡山ポケット版御書