日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

上野尼御前御返事

<前 P1582 次>


汝が不孝極り無かりしかども我が遺言を違へざりし故に自業自得果うらみがたかりし所に金色の仏一体無間地獄に出現して仮使遍法界断善諸衆生一聞法華経決定成菩提と云云、此の仏無間地獄に入り給いしかば大水を大火になげたるが如し、少し苦みやみぬる処に我合掌して仏に問い奉りて何なる仏ぞと申せば仏答えて我は是れ汝が子息遺竜が只今書くところの法華経の題目六十四字の内の妙の一字なりと言ふ、八巻の題目は八八六十四の仏六十四の満月と成り給へば無間地獄の大闇即大明となりし上無間地獄は当位即妙不改本位と申して常寂光の都と成りぬ、我及び罪人とは皆蓮の上の仏と成りて只今都率の内院へ上り参り候が先ず汝に告ぐるなりと云云、遺竜が云く、我が手にて書きけり争でか君たすかり給うべき、而も我が心よりかくに非ず、いかにいかにと申せば、父答えて云く汝はかなし汝が手は我が手なり汝が身は我が身なり汝が書きし字は我が書きし字なり、汝心に信ぜざれども手に書く故に既にたすかりぬ、譬えば小児の火を放つに心にあらざれども物を焼くが如し、法華経も亦かくの如し存外に信を成せば必ず仏になる、又其の義を知りて謗ずる事無かれ、但し在家の事なればいひしこと故大罪なれども懺悔しやすしと云云、此の事を大王に申す、大王の言く我が願既にしるし有りとて遺竜弥朝恩を蒙り国又こぞつて此の御経を仰ぎ奉る。

 然るに故五郎殿と入道殿とは尼御前の父なり子なり、尼御前は彼の入道殿のむすめなり、今こそ入道殿は都率の内院へ参り給うらめ、此の由をはわきどのよみきかせまいらせ給うべし、事そうそうにてくはしく申さず候。

                             恐恐謹言

=十一月十五日                    日蓮花押

% 上野尼御前御返事


<前 P1582 次>


満月城岡山ポケット版御書