日蓮大聖人御書
ネット御書
(本尊問答抄)
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からくして同の義をいへば一向真言師はさる事おもひもよらずとわらふなり。
 然らば日本国中に数十万の寺社あり皆真言宗なりたまたま法華宗を並ぶとも真言は主の如く法華は所従の如くなり若しくは兼学の人も心中は一同に真言なり、座主長吏検校別当一向に真言たるうへ上に好むところ下皆したがふ事なれば一人ももれず真言師なり、されば日本国或は口には法華経最第一とはよめども心は最第二最第三なり或は身口意共に最第二三なり、三業相応して最第一と読める法華経の行者は四百余年が間一人もなしまして能持此経の行者はあるべしともおぼへず、如来現在猶多怨嫉況滅度後の衆生は上一人より下万民にいたるまで法華経の大怨敵なり。
 然るに日蓮は東海道十五箇国の内第十二に相当る安房の国長狭の郡東条の郷片海の海人が子なり、生年十二同じき郷の内清澄寺と申す山にまかり登り住しき、遠国なるうへ寺とはなづけて候へども修学の人なし然而随分諸国を修行して学問し候いしほどに我が身は不肖なり人はおしへず十宗の元起勝劣たやすくわきまへがたきところに、たまたま仏菩薩に祈請して一切の経論を勘て十宗に合せたるに倶舎宗は浅近なれども一分は小乗経に相当するに似たり、成実宗は大小兼雑して謬ワあり律宗は本は小乗中比は権大乗今は一向に大乗宗とおもへり又伝教大師の律宗あり別に習う事なり、法相宗は源権大乗経の中の浅近の法門にてありけるが次第に増長して権実と並び結句は彼の宗宗を打ち破らんと存ぜり譬えば日本国の将軍将門純友等のごとし下に居て上を破る、三論宗も又権大乗の空の一分なり此れも我は実大乗とおもへり、華厳宗は又権大乗と云ひながら余宗にまされり譬えば摂政関白のごとし然而法華経を敵となして立てる宗なる故に臣下の身を以て大王に順ぜんとするがごとし、浄土宗と申すも権大乗の一分なれども善導法然がたばかりかしこくして諸経をば上げ観経をば下し正像の機をば上げ末法の機をば下して末法の機に相叶える念仏を取り出して機を以て経を打ち一代の聖教を失いて念仏の一門を立てたり


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