日蓮大聖人御書
ネット御書
(顕謗法抄)
<1.前 P0456 2.次>

又善人あり一生の間ただ一善を修す而るを他の善えうつさんがためにそのぜんをそしる、一事の中に於て或は呵し或は讃すというこれなり、大論の四悉檀の中の対治悉檀又これをなじ、浄名経の弾呵と申すは阿含経の時ほめし法をそしるなり、此等を以てをもふに或は衆生多く小乗の機あれば大乗を謗りて小乗経に信心をまし或は衆生多く大乗の機なれば小乗をそしりて大乗経に信心をあつくす、或は衆生弥陀仏に縁あれば諸仏をそしりて弥陀に信心をまさしめ、或は衆生多く地蔵に縁あれば諸菩薩をそしりて地蔵をほむ、或は衆生多く華厳経に縁あれば諸経をそしりて華厳経をほむ、或は衆生大般若経に縁あれば諸経をそしりて大般若経をほむ、或は衆生法華経或は衆生大日経等同く心うべし、機を見て或は讃め或は毀る共に謗法とならず而るを機をしらざる者みだりに或は讃め或は呰るは謗法となるべきか、例せば華厳宗三論法相天台真言禅浄土等の諸師の諸経をはして我が宗を立つるは謗法とならざるか。
 難じて云く宗を立てんに諸経諸宗を破し仏菩薩を讃むるに仏菩薩を破し他の善根を修せしめんがためにこの善根をはするくるしからずば阿含等の諸の小乗経に華厳経等の諸大乗経をはしたる文ありや、華厳経に法華大日経等の諸大乗経をはしたる文これありや、答えて云く阿含小乗経に諸大乗経をはしたる文はなけれども華厳経には二乗大乗一乗をあげて二乗大乗をはし涅槃経には諸大乗経をあげて涅槃経に対してこれをはす、密厳経には一切経中王ととき無量義経には四十余年未顕真実ととかれ阿弥陀経には念仏に対して諸経を小善根ととかる、これらの例一にあらず故に又彼の経経による人師皆此の義を存せり、此等をもつて思うに宗を立つる方は我が宗に対して諸経を破るはくるしからざるか、難じて云く華厳経には小乗大乗一乗とあげ密厳経には一切経中王ととかれ涅槃経には是諸大乗とあげ阿弥陀経には念仏に対して諸経を小善根とはとかれたれども無量義経のごとく四十余年と年限を指して其の間の大部の諸経阿含方等般若華厳等の名をよびあげて勝劣をとける事これなし、


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