日蓮大聖人御書
ネット御書
(妙密上人御消息)
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仏の金言空くして正直の御経に大妄語を雑へたるなるべし、此等を以て思ふに恐くは天台伝教の聖人にも及ぶべし又老子孔子をも下しぬべし、日本国の中に但一人南無妙法蓮華経と唱えたり、これは須弥山の始の一塵大海の始の一露なり、二人三人十人百人一国二国六十六箇国已に島二にも及びぬらん、今は謗ぜし人人も唱へ給うらん、又上一人より下万民に至るまで法華経の神力品の如く一同に南無妙法蓮華経と唱へ給ふ事もやあらんずらん、木はしづかならんと思へども風やまず春を留んと思へども夏となる、日本国の人人は法華経は尊とけれども日蓮房が悪ければ南無妙法蓮華経とは唱えまじとことはり給ふとも今一度も二度も大蒙古国より押し寄せて壹岐対馬の様に男をば打ち死し女をば押し取り京鎌倉に打ち入りて国主並びに大臣百官等を搦め取り牛馬の前にけたてつよく責めん時は争か南無妙法蓮華経と唱へざるべき、法華経の第五の巻をもって日蓮が面を数箇度打ちたりしは日蓮は何とも思はずうれしくぞ侍りし、不軽品の如く身を責め勧持品の如く身に当つて貴し貴し。
 但し法華経の行者を悪人に打たせじと仏前にして起請をかきたりし梵王帝釈日月四天等いかに口惜かるらん、現身にも天罰をあたらざる事は小事ならざれば始中終をくくりて其の身を亡すのみならず議せらるるか、あへて日蓮が失にあらず謗法の法師等をたすけんが為に彼等が大禍を自身に招きよせさせ給うか。
 此等を以て思ふに便宜ごとの青鳧五連の御志は日本国の法華経の題目を弘めさせ給ふ人に当れり、国中の諸人一人二人乃至千万億の人題目を唱うるならば存外に功徳身にあつまらせ給うべし、其の功徳は大海の露をあつめ須弥山の微塵をつむが如し、殊に十羅刹女は法華経の題目を守護せんと誓わせ給う、此を推するに妙密上人並びに女房をば母の一子を思ふが如ぐ牛の尾を愛するが如く昼夜にまほらせ給うらん、たのもしたのもし、事多しといへども委く申すにいとまあらず、女房にも委く申し給へ此は諂へる言にはあらず、


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