日蓮大聖人御書
ネット御書
(五人所破抄)
<1.前 P1612 2.次>

 又五人一同に云く凡そ倭漢両朝の章疏を披いて本迹二門の元意を探るに判教は玄文に尽し弘通は残る所無し、何ぞ天台一宗の外に胸臆の異義を構えんや、拙いかな尊高の台嶺を褊して辺鄙の富山を崇み、明静の止観を閣いて仮字の消息を執する、誠に是れ愚癡を一身に招き耻辱を先師に及ぼす者か、僻案の至りなり甚だ以て然るべからず、若し聖人の製作と号し後代に伝えんと欲せば宜く卑賎の倭言を改め漢字を用ゆべし云云。
 日興が云く、夫れ竜樹天親は即ち四依の大士にして円頓一実の中道を申ぶと雖も而も権を以て面と為し実を隠して裏に用ゆ、天台伝教は亦五品の行位にして専ら本迹二門の不同を分ち而も迹を弘め衆を救い本を残して末に譲る、内鑒は然りと雖も外は時宜に適うかの故に或は知らざるの相を示し或は知つて而も未だ闡揚せず、然るに今本迹両経共に天台の弘通と称するの条は経文に違背し解釈は拠を失う、所以は宝塔三箇の鳳詔に驚き勧持二万の勅答を挙げて此土の弘経を申ぶと雖も迹化の菩薩に許さず、過八恒沙の競望を止めて不須汝等護持此経と示し地涌千界の菩薩を召して如来一切所有の法を授く、迹化他方の極位すら尚劫数の塵点に暗し止善男子の金言に豈幽微の実本を許さんや、本門五字の肝要は上行菩薩の付嘱なり誰か胸臆なりと称せんや[ 委細文の如し経を開いて見るべし] 。
 次に天台大師経文を消したもうに、「如来之を止むるに凡そ三義有り汝等各各自ら己が住有り若し此の土に住すれば彼の利益を廃せん、又他方は此土に結縁の事浅し宣授せんと欲すと雖も必ず巨益無からん、又若し之を許さば則ち下を召すことを得ず下若し来らずんば迹も破することを得ず遠も顕すことを得ず是を三義と為す、如来之を止めて下方を召して来らすに亦三義有り、是れ我が弟子応に我が法を弘むべし、縁深厚なるを以て能く此土に遍して益し分身の土に遍して益し他方の土に遍して益し、又開近顕遠することを得、是の故に彼を止めて下を召すなり」文、又云く「爾前仏告上行の下是れ第三に結要付嘱」と云々、


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