日蓮大聖人御書
ネット御書
(法蓮抄)
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僧尼の頭をはねし時もかかる瑞はなし、漢土には会昌天子の寺院四千六百余所をとどめ僧尼二十六万五百人を還俗せさせし時も出現せず、我が朝には欽明の御宇に仏法渡りて守屋仏法に敵せしにも清盛法師七大寺を焼き失い山僧等園城寺を焼亡せしにも出現せざる大彗星なり。
 当に知るべし是よりも大事なる事の一閻浮提の内に出現すべきなりと勘えて立正安国論を造りて最明寺入道殿に奉る、彼の状に云く〔取詮〕此の大瑞は他国より此の国をほろぼすべき先兆なり、禅宗念仏宗等が法華経を失う故なり、彼の法師原が頚をきりて鎌倉ゆゐの浜にすてずば国正に亡ぶべし等云云、其の後文永の大彗星の時は又手ににぎりて之を知る、去文永八年九月十二日の御勘気の時重ねて申して云く予は日本国の棟梁なり我を失うは国を失うなるべしと今は用いまじけれども後のためにとて申しにき、又去年の四月八日に平左衛門尉に対面の時蒙古国は何比かよせ候べきと問うに、答えて云く経文は月日をささず但し天眼のいかり頻りなり今年をばすぐべからずと申したりき、是等は如何にして知るべしと人疑うべし予不肖の身なれども法華経を弘通する行者を王臣人民之を怨む間法華経の座にて守護せんと誓をなせる地神いかりをなして身をふるひ天神身より光を出して此の国をおどす、いかに諌むれども用いざれば結局は人の身に入つて自界叛逆せしめ他国より責むべし。
 問うて云く此の事何たる証拠あるや、答う経に云く「悪人を愛敬し善人を治罰するに由るが故に星宿及び風雨皆時を以て行わず」等云云、夫れ天地は国の明鏡なり今此の国に天災地夭あり知るべし国主に失ありと云う事を鏡にうかべたれば之を諍うべからず国主小禍のある時は天鏡に小災見ゆ今の大災は当に知るべし大禍ありと云う事を、仁王経には小難は無量なり中難は二十九大難は七とあり此の経をば一には仁王と名づけ二には天地鏡と名づく、此の国主を天地鏡に移して見るに明白なり、又此の経文に云く「聖人去らん時は七難必ず起る」等云云、当に知るべし此の国に大聖人有りと、又知るべし彼の聖人を国主信ぜずと云う事を。


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