日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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主師親御書

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破れたる石は合うとも枯木に花はさくとも二乗は仏になるべからずと仰せられしかば須菩提は茫然として手の一鉢をなげ迦葉は涕泣の声大千界を響すと申して歎き悲みしが今法華経に至つて迦葉尊者は光明如来の記・を授かりしかば目連須菩提摩訶迦旃延等は是を見て我等も定めて仏になるべし飢えたる国より来つて忽に大王の膳にあへるが如しと喜びし文なり、我等衆生無始曠劫より已来妙法蓮華経の如意宝珠を片時も相離れざれども無明の酒にたぼらかされて衣の裏にかけたりとしらずして少きを得て足りぬと思ひぬ、南無妙法蓮華経とだに唱え奉りたらましかば速に仏に成るべかりし衆生どもの五戒十善等のわずかなる戒を以て或は天に生れて大梵天帝釈の身と成つていみじき事と思ひ或時は人に生れて諸の国王大臣公卿殿上人等の身と成つて是れ程のたのしみなしと思ひ少きを得て足りぬと思ひ悦びあへり、是を仏は夢の中のさかへまぼろしのたのしみなり唯法華経を持ち奉り速に仏になるべしと説き給へり、又四の巻に云く「而も此の経は如来の現在すら猶怨嫉多し況や滅度の後をや」云云。

 釈迦仏は師子頬王の孫浄飯王には嫡子なり十善の位をすて五天竺第一なりし美女耶輸多羅女をふりすてて十九の御年出家して勤め行ひ給いしかば三十の御年成道し御坐して三十二相八十種好の御形にて御幸なる時は大梵天王帝釈左右に立ち多聞持国等の四天王先後囲繞せり、法を説き給ふ御時は四弁八音の説法は祇園精舎に満ち三智五眼の徳は四海にしけり、然れば何れの人か仏を悪むべきなれども尚怨嫉するもの多し、まして滅度の後一毫の煩悩をも断ぜず少しの罪をも弁へざらん法華経の行者を悪み嫉む者多からん事は雲霞の如くならんと見えたり、然れば則ち末代悪世に此の経を有りのままに説く人には敵多からんと説かれて候に世間の人人我も持ちたり我も読み奉り行じ候に敵なきは仏の虚言か法華経の実ならざるか、又実の御経ならば当世の人人経をよみまいらせ候は虚よみか実の行者にてはなきか如何


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満月城岡山ポケット版御書