日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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小乗大乗分別抄

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一身に備えたる六根の諸法あに実なるべきや、大冰の上に造れる諸舎は春をむかへては破れざるべしや水中の満月は実に体ありや、爾前の成仏往生等は水中の星月の如し爾前の成仏往生等は体に随ふ影の如し、本門寿量品をもつて見れば寿量品の智慧をはなれては諸経は跨節当分の得道共に有名無実なり、天台大師此の法門を道場にして独り覚知し玄義十巻文句十巻止観十巻等かきつけ給うに諸経に二乗作仏久遠実成絶えてなき由を書きをき給ふ、是は南北の十師が教相に迷つて三時四時五時四宗五宗六宗一音半満三教四教等を立てて教の浅深勝劣に迷いし此等の非義を破らんが為にまず眼前たる二乗作仏久遠実成をもつて諸経の勝劣を定め給いしなり、然りと云つて余界の得道をゆるすにはあらず、其の後華厳宗の五教法相宗の三時真言宗の顕密五蔵十住心義釈の四句等は南三北七の十師の義よりも尚・れる教相なり。

 此等は他師の事なればさてをきぬ又自宗の学者が天台妙楽伝教大師の御釈に迷うて爾前の経経には二乗作仏久遠実成計りこそ無けれども余界の得道は有りなんど申す人人一人二人ならず日本国に弘まれり、他宗の人人是に便を得て弥天台宗を失ふ此等の学者は譬えば野馬の蜘蛛の網にかかり渇る鹿の陽炎をおふよりもはかなし例せば頼朝の右大将家は泰衡を討たんが為に泰衡を誑して義経を討たせ、太政入道清盛は源氏を喪して世をとらんが為に我が伯父平馬介忠正を切る義朝はたぼらかされて慈父為義を切るが如し、此等は墓なき人人のためしなり、天台大師法華経より外の経経には二乗作仏久遠実成は絶えてなしなんど釈し給へば菩薩の作仏凡夫の往生はあるなんめりとうち思いて我等は二乗にもあらざれば爾前の経経にても得道なるべし此の念い心中にさしはさめり、其の中にも観経の九品往生はねがひやすき事なれば法華経をばなげすて念仏申して浄土に生れて観音勢至阿弥陀仏に値いたてまつて成仏を遂ぐべし云云、当世の天台宗の人人を始として諸宗の学者皆此くの如し実義をもつて申さば一切衆生の成仏のみならず六道を出で十方の浄土に往生する事はかならず法華経の力なり、


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