日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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大田殿許御書 /文永十二年正月

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此れ等の僻文は螢火を日月に同じ大海を江河に入るるか。

 疑つて云く経経の勝劣之れを論じて何か為ん、答えて曰く法華経の第七に云く「能く是の経典を受持する者有れば亦復是くの如し一切衆生の中に於て亦為第一なり」等云云、此の経の薬王品に十喩を挙げて已今当の一切経に超過すと云云、第八の譬兼ねて上の文に有り所詮仏の意の如くならば経の勝劣を詮ずるのみに非ず法華経の行者は一切の諸人に勝れたるの由之れを説く、大日経等の行者は諸山衆星江河諸民なり、法華経の行者は須弥山日月大海等なり、而るに今の世は法華経を軽蔑すること土の如し民の如し真言の僻人等を重崇して国師と為ること金の如し王の如し之に依つて増上慢の者国中に充満す青天瞋を為し黄地夭・を致す涓聚りて・塹を破るが如く民の愁い積りて国を亡す等是なり、問うて曰く内外の諸釈の中に是くの如きの例之れ有りや、答えて曰く史臣呉競が太宗に上つる表に云く「竊かに惟れば太宗文武皇帝の政化曠古より之れ求むるに未だ是くの如くの盛なる者有らず唐尭虞舜夏禹殷湯周の文武漢の文景と雖も皆未だ逮ばざる処なり」云云、今此の表を見れば太宗を慢ぜる王と云う可きか政道の至妙先聖に超えて讃ずる所なり、章安大師天台を讃めて云く「天竺の大論尚其の類に非ず真丹の人師何ぞ労く語るに及ばん此れ誇耀に非ず法相の然らしむるのみ」等云云、従義法師重ねて讃めて云く「竜樹天親未だ天台には若かず」伝教大師自讃して云く「天台法華宗の諸宗に勝るることは所依の経に拠るが故に自讃毀他ならず庶くば有智の君子経を尋ねて宗を定めよ」云云、又云く「能く法華を持つ者は亦衆生の中の第一なり已に仏説に拠る豈自讃ならんや」云云、今愚見を以つて之を勘うるに善無畏弘法慈覚智証等は皆仏意に違うのみに非ず或は法の盗人或は伝教大師に逆える僻人なり、故に或は閻魔王の責を蒙り或は墓墳無く或は事を入定に寄せ或は度度大火大兵に値えり権者は辱を死骸に与えざる処の本文に違するか、疑つて云く六宗の如く真言の一宗も天台に落たる状之れ有りや、答う記の十の末に之を載せたり、


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満月城岡山ポケット版御書