日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

法蓮抄

<前 P1043 次>


故に梵王と帝釈とを眷属とせり、縁覚は声聞に似るべくもなき人なり仏と出世をあらそふ人なり、昔猟師ありき飢えたる世に利・と申す辟支仏にひえの飯を一盃供養し奉りて彼の猟師九十一劫が間人中天上の長者と生る、今生には阿那律と申す天眼第一の御弟子なり、此れを妙楽大師釈して云く「稗飯軽しと雖も所有を尽し及び田勝るるを以ての故に勝るる報を得る」等云云、釈の心はひえの飯は軽しといへども貴き辟支仏を供養する故にかかる大果報に度度生るとこそ書かれて候へ、又菩薩と申すは文殊弥勒等なり、此の大菩薩等は彼の辟支仏に似るべからざる大人なり、仏は四十二品の無明と申す闇を破る妙覚の仏なり、八月十五夜の満月のごとし、此の菩薩等は四十一品の無明をつくして等覚の山の頂にのぼり十四夜の月のごとし、仏と申すは上の諸人には百千万億倍すぐれさせ給へる大人なり、仏には必ず三十二相あり其の相と申すは梵音声無見頂相肉・相白毫相乃至千輻輪相等なり、此の三十二相の中の一相をば百福を以て成じ給へり、百福と申すは仮令大医ありて日本国漢土五天竺十六の大国五百の中国十千の小国乃至一閻浮提四天下六欲天乃至三千大千世界の一切衆生の眼の盲たるを本の如く一時に開けたらんほどの大功徳を一つの福として此の福百をかさねて候はんを以て三十二相の中の一相を成ぜり、されば此の一相の功徳は三千大千世界の草木の数よりも多く四天下の雨の足よりもすぎたり、設い壊劫の時僧・陀と申す大風ありて須弥山を吹き抜いて色究竟天にあげてかへつて微塵となす大風なり、然れども仏の御身の一毛をば動かさず仏の御胸に大火あり平等大慧大智光明火坑三昧と云う、涅槃の時は此の大火を胸より出して一身を焼き給いしかば六欲四海の天神竜衆等仏を惜み奉る故にあつまりて大雨を下し三千の大地を水となし須弥は流るといへども此の大火はきへず、仏にはかかる大徳ましますゆへに阿闍世王は十六大国の悪人を集め一四天下の外道をかたらひ提婆を師として無量の悪人を放ちて仏弟子をのりうち殺害せしのみならず、賢王にてとがもなかりし父の大王を一尺の釘をもつて七処までうちつけ、


<前 P1043 次>


満月城岡山ポケット版御書