日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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曾谷殿御返事 /弘安二年八月 五十八歳御作

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天台宗には二の意あり一には華厳方等般若涅槃法華は同じく醍醐味なり、此の釈の心は爾前と法華とを相似せるににたり世間の学者等此の筋のみを知りて法華経は五味の主と申す法門に迷惑せるゆへに諸宗にたぼらかさるるなり、開未開異なれども同じく円なりと云云是は迹門の心なり、諸経は五味法華経は五味の主と申す法門は本門の法門なり、此の法門は天台妙楽粗書かせ給い候へども分明ならざる間学者の存知すくなし、此の釈に若論教旨とかかれて候は法華経の題目を教旨とはかかれて候、開権と申すは五字の中の華の一字なり顕遠とかかれて候は五字の中の蓮の一字なり独得妙名とかかれて候は妙の一字なり、意在於此とかかれて候は法華経を一代の意と申すは題目なりとかかれて候ぞ、此れを以て知んぬべし法華経の題目は一切経の神一切経の眼目なり、大日経等の一切経をば法華経にてこそ開眼供養すべき処に大日経等を以て一切の木画の仏を開眼し候へば日本国の一切の寺塔の仏像等形は仏に似れども心は仏にあらず九界の衆生の心なり、愚癡の者を智者とすること是より始まれり、国のついへのみ入て祈とならず還て仏変じて魔となり鬼となり国主乃至万民をわづらはす是なり、今法華経の行者と檀那との出来する故に百獣の師子王をいとひ草木の寒風をおそるるが如し、是は且くをく法華経は何故ぞ諸経に勝れて一切衆生の為に用いる事なるぞと申すに譬えば草木は大地を母とし虚空を父とし甘雨を食とし風を魂とし日月をめのととして生長し華さき菓なるが如く、一切衆生は実相を大地とし無相を虚空とし一乗を甘雨とし已今当第一の言を大風とし定慧力荘厳を日月として妙覚の功徳を生長し大慈大悲の華さかせ安楽仏果の菓なつて一切衆生を養ひ給ふ、一切衆生又食するによりて寿命を持つ、食に多数あり土を食し水を食し火を食し風を食する衆生もあり、求羅と申す虫は風を食すうぐろもちと申す虫は土を食す、人の皮肉骨髄等を食する鬼神もあり、尿糞等を食する鬼神もあり、寿命を食する鬼神もあり、声を食する鬼神もあり、石を食するいをくろがねを食するばくもあり、


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満月城岡山ポケット版御書